志村信裕
水影

展覧会名  :水影

アーティスト:志村信裕

開催日   :2022年11月3日(木・祝)~2022年11月27日(日)

会場    :古民家 いなえ

主催    :佐原アートプロジェクト実行委員会、佐原みらい運河株式会社

協賛    :一般財団法人小森文化財団、株式会社エヌアイデイ

企画協力  :Color Lounge Art株式会社、NPO法人佐原アカデミア

音響    :田中啓介

会場設営  :LIFE LIVE 糟谷健三

取材協力  :永澤勝枝、椎名典子

展覧会

 1 『光の曝書』 2014年
  古書に投影

ある日、1931(昭和6)年に大阪毎日新聞社と東京日日新聞社から刊行された『日本新名勝俳句』と題された古い本を見つけた。全国の名勝地133景を詠んだ俳句を新聞紙上で募り、集まった約10万句から高浜虚子によって選句された1万句が各名勝ごとに掲載されている。利根川の頁を見開くと、およそ90年前の利根川の風景が人々の営みや自然の移ろいと共に描かれている。俳句はたった17字の少ない言葉によって、脳内で再生することができる一葉の写真のようでもある。曝書(ばくしょ)とは書物を日光にさらして虫干しをする風習のこと。木洩れ日の映像に照らされた古書を覗くと、幾つもの懐かしい記憶が風のなかで静かにさらされている。

 2 『水鏡』 2022年

  晒に映像投影、12分55秒

  語り:髙塚すぎ、髙安きく  

蔵だった場所に何を展示すればいいのか考えたとき、浮かんだのは物ではなく「声」だった。それも佐原に生まれ育った方ではなく、移り住んできた方の声である。生活と河川が今よりも近接していた時代、花嫁は「嫁入り舟」に乗って嫁いできた。しかし1965(昭和40)年を境に水路は埋め立てられていき、その風習も次第に失くなっていく。今回は幸いにも昭和30年代に嫁いできた女性達の生活史を聞くことができた。「余計なことはしゃべるな」、そう忠告された女性は長いあいだ口を閉ざすしかなかった。どこにも残されることはなかった彼女達の語りに耳を傾けるとき、この地域の歴史が水鏡のように映し出されるでしょう。晒(さらし)に投影された利根川の反照が見えない記憶に光をあてるのです。

ワークショップ

『身近な色に注目して4コマの絵コンテを描こう』
朝起きて、夜眠るまで。
特別なことが起きたわけでない日常だけれども、改めて一日の時の流れを思い出してみると、誰かに伝えたい笹なことが浮かび上がってきます。
けれども些細なことを人に伝える=表現するのは案外難しいものです。
映像作品を制作するアーティスト志村信裕とともに、参加者それぞれが日常の中で印象に残った「色」に注目して、一日の時間の流れに沿って4コマの絵コンテを描き、そして「表現する」ことに主眼を置きます。
「色」といっても、私が思い描く白色と、貴方が思い描く白色とではきっと違います。だからあえて絵コンテに「色」は使わず、黒鉛筆で描いていきます。
記憶を元に他愛ない一日をかたちにして、人に伝えて、想像させることで、思い出すことも表現となることを体験します。

志村信裕 「水影」 甘味喫茶いなえ 関連企画

志村信裕の美しい映像作品と古民家いなえの関連企画
甘味喫茶の壁一面に志村信裕の代表作『Goldfish』が映し出され、いなえの甘味メニューに展示期間限定で愛らしい金魚をあしらいました

AR(拡張現実)の技術を活用していなえの中庭の空間に志村信裕の代表作『retrace』、『Goldfish』が美しく浮かび上がるアート体験を提供

アーティストプロフィール

志村信裕
志村信裕 (https://www.nshimu.com/
千葉県香取市を拠点に活動
1982年東京都生まれ
2007年武蔵野美術大学大学院映像コース修了
2016年から2018年まで文化庁新進芸術家海外研修制度により、フランス国立東洋言語文化大学(INALCO)の客員研究員としてパリに滞在
身近な日用品や風景を題材にした映像インスタレーション作品から、近年では各地でのフィールドワークを元に、ドキュメンタリーの手法を取り入れた映像作品を制作
ローカルな視点から、可視化され難い社会問題や歴史に焦点をあてるプロジェクトを手掛ける

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