古くて新しい数式が映し出すモノ_カバー

「古くて新しい数式が
映し出すモノ」

展覧会名  :古くて新しい数式が映し出すモノ  -江戸が見た世界、現代が見ている世界、そして未来が見る世界-

アーティスト:加藤雅貴

開催日   :2022年4月2日(土)~2022年4月30日(土) 

会場    :古民家 いなえ
 

展覧会

Ⅰ.the Art of mathematical formulas

ペンプロッターを用いて、数式とその数式により変換された波や、絵画の幾何学的な美しさを経年劣化しにくいボールペンで紙に出力する作品です。
過去にsin,cosの数式で「波」に変換された100⼈のアーカイブと、絵画の美の基準ではなく純粋に三⾓形のみで再構成した「幾何学的な美しさ」を交互に描き出す。
量⼦⼒学の世界では、観測するまで(⽬に⾒るまで)存在はぼんやりとした霧のような可能性でしかなく、その実在を考えないという特徴をもちます。本展⽰では、⼀瞬で写しとることが可能なプリンターやディスプレイではなくペンプロッターのみを使⽤し、ペンの描画速度でゆっくりと描き出されるものを待つ私たちに「観測による実在の確定」を体験させます。

Ⅱ.Quantization of Sawara

地球の大きさ、宇宙について知りたかった伊能忠敬の探究心は、「日本地図」を作成することに向かいました。その当時はまだ、直線や三角形に近似した平面的な地図で、境界を明瞭にすることが世界の見方でした。我々は今、Google Earthなど3次元的な地図を実現しています。宇宙から地球を見ることもできるようになり、世界に境界線は存在しないことを知っています。そして未来には、量子力学に基づいた技術である量子コンピュータが実用化されることで、新しい世界の見方への展開が期待されています。量子力学の世界では、全ての物質は粒子と「波」の性質をもちあわせます。
3Dフォトスキャンで撮影された佐原の町並、佐原の人々を、三角形からsin,conの波の単純な重ね合わせへと変換し、境界線が完全に消失していく未来がどうなるのかを想像させます。

Ⅲ.Reconstruction of Wasan

ロボットアームが江戸時代の和算(数学)に用いられた計算用具、算木を使って、数式を解いていく作品です。
⽇本独⾃の数学である「和算」は江⼾時代260年間に、独⼒で発展していき、洋算に匹敵するレベルまでに⾶躍しました。和算家たちは、ソロバンでは計算できなかった多元⾼次の連⽴⽅程式を、⾚く着⾊した⽊(本展⽰では⽩⾊)を「加える数」、⿊く着⾊した⽊を「引く数」として表した算⽊で解いていました。現代のテクノロジーであるロボットアームが算⽊を⽤いて答えを導き出す過程は、極めてシンプルでありながらも⾒事であり、和算の美しさを再解釈します。それは和算と洋算の間での優劣を語るものではなく、⽂化的、地理学的、哲学的な思想の相違による感覚に違いはあれど、核となる概念は普遍的なものであるということです。

ワークショップ

『sinθ、cosθをアートにしよう』
sin,cosの波の重ね合わせによって変換された参加者の顔を、スマートフォンと手作りした投影装置を使ってホログラムで立体的に映し出すワークショップを開催しました。

アーティストプロフィール

artist_kato

加藤雅貴 / Masaki KATO (https://sushiki-kato.com/
1996年生まれ
研究者/メディアアーティスト/TikTok厳選クリエーター(数式の美術館)

ダ・ヴィンチに代表されるルネサンス期のように、芸術と科学の垣根がない社会を作りたいと考え、某国立大学で物理学の研究を行いながら、数式を用いたメディアアート作品群(数式の美術館)を制作している。
ガリレオ ・ガリレイは「自然という書物は数学の言葉で書かれている」と言った。芸術家が絵筆などを使って美しい自然の風景を描くように、数学者や物理学者は数字や文字を使って我々の世界を美しい数式で表現する。
「あらゆるモノを数式で表現する」を目標に、数式で表現される美しい世界の一端を味わえるような作品を制作している。


COPYRIGHT (C) 佐原みらい運河 株式会社