インフラ構築とは?基礎や構築~運用の流れ、スキル習得方法まで解説
多くの企業にとって、ITインフラの構築、運用は効率よく事業を進めていくうえでの課題です。
企業が事業を展開するにあたって、パソコンやネットワーク回線など、さまざまなIT機器が導入されていますが、安定的に稼働させるためには「インフラ構築」に精通したスキルが必要となります。
急速にリモートワークの導入が進んでいる中、「現在のインフラを見直したい」「新たに構築したい」と考える企業も増えているのではないでしょうか。
ここでは、ITインフラの基礎知識や構築から運用までの流れについて詳しく解説します。
また、未経験者がインフラエンジニアの知識を習得する方法や、ITインフラをプロに依頼するメリット・デメリットもご紹介します。
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- 1.インフラとは?
- 2.ITインフラとは?
- 2.1.ハードウェア
- 2.1.1.パソコン(パーソナルコンピュータ)
- 2.1.2.サーバ
- 2.1.3.ストレージ
- 2.1.4.テープデータストレージ
- 2.1.5.ネットワーク
- 2.2.ソフトウェア
- 2.2.1.OS(オペレーティングシステム)
- 2.2.2.ミドルウェア
- 3.インフラ構築の流れ
- 4.インフラ構築で注意するポイント
- 5.インフラ運用で注意するポイント
- 6.自社構築と外部委託はどちらがおすすめ?
- 6.1.自社で構築する場合
- 6.1.1.自社構築のメリット
- 6.1.2.自社構築のデメリット
- 6.1.3.自社構築が向いているケース
- 6.2.外部委託、外注で構築する場合
- 6.2.1.外部委託のメリット
- 6.2.2.外部委託のデメリット
- 6.2.3.失敗しない外部委託先の選び方
- 6.2.4.外部委託が向いているケース
- 7.インフラエンジニアに必要なスキルの習得方法
- 7.1.本で勉強する
- 7.2.オンライン講座を受講する
- 7.3.専門学校に通う
- 7.4.資格を取得する
- 8.インフラ構築を外部委託するならエヌアイデイ
- 9.まとめ
インフラとは?
インフラとは、「インフラストラクチャー(Infrastructure)」の略で、日々を支える基盤(下部構造)となるものです。
例えば、電気、水道、公共交通機関や病院などの公共性・公益性の高い設備や施設、構造物などを指します。普段使う「インフラ」はこちらの意味で使うことが多いのではないでしょうか。
ITインフラとは?
一方「ITインフラ」は、サーバやパソコンなどのハードウェア、インターネットやLANなどのネットワーク、OSや「ミドルウェア」などのソフトウェアを含めた総称になります。
また、「インフラ構築」とは、そのITインフラの基盤を一から作りあげていくことです。企業のIT環境において、今までは社内にサーバやネットワーク機器を設置して運用していく「オンプレミス」という手法が主流でしたが、近年では使用したいときに使用した分だけ従量課金で契約できるクラウド環境へ移行しつつあります。ますますIT環境が煩雑化する時代を勝ち抜くためには、企業におけるITインフラの導入や整備が重要です。
ITインフラは主にハードウェアとソフトウェアで構成されています。
ここからは、ITインフラに含まれる具体的な要素を解説していきます。
ハードウェア
「ハードウェア」とは、処理・記憶・入力・出力の機能を持つ回路・機器を指します。
まずは、ITインフラの代表的なハードウェアを詳しく説明します。
パソコン(パーソナルコンピュータ)
基本的に、個人で使うことを目的に作られているコンピュータを「パソコン」と呼びます。
デスクトップ型・ノート型・一体型など多くのタイプがあります。
ITインフラと人をつなぐ役割を果たすツールで、多くの作業を実行する役目を果たします。
サーバ
パソコンを含む他のコンピュータから要求や指示を受け、情報や処理結果を返す役割を持つコンピュータやソフトウェアを「サーバ」と呼びます。
サーバごとに機能や性能が異なり、求められる情報によってメールサーバ・Webサーバ・仮想化サーバなどの多様なサーバが存在します。
ストレージ
「ストレージ」は、大容量のデータを保存しておくための補助記憶装置です。
HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などがあり、データの読み込みや書き込みを高速処理できるという特徴があります。インターネット上のスペースを利用するオンラインストレージと呼ばれるサービスもあります。
テープデータストレージ
「テープデータストレージ」は、磁気テープを記録媒体とした補助記憶装置です。
着脱可能なためデータをバックアップしておくメディアとして使用されることが多く、サーバやストレージに格納しきれなくなったデータの退避場所としても対応できます。
ネットワーク
「ネットワーク」とは、パソコン・サーバ・ストレージなど複数のコンピュータをつなげる通信技術および状態のことです。
ネットワークをつなぐ方法には、LANケーブルを使って接続する有線接続と、Wi-Fiなどを使って接続する無線接続があります。
近年では、ノートパソコンやタブレットの利用が進んでいるため、無線タイプの導入が増えています。
ネットワークの構築について詳しくもっと知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
あわせて読む>>
「LAN(ローカルエリアネットワーク)や構築手順をわかりやすく解説」
ソフトウェア
「ソフトウェア」は、パソコンやサーバなどのコンピュータを動かすために命令をくだすプログラムです。
具体的にはWindowsやmacOSといったOSやアプリケーション、OSとアプリケーションの間で処理をおこなうミドルウェアのことを指します。
ここでは、ITインフラに不可欠なソフトウェアを詳しく説明します。
OS(オペレーティングシステム)
「OS」とは、コンピュータやサーバを動かすための土台となる基本ソフトウェアです。
代表的なOSとして、パソコンに組み込まれるWindowsやmacOS、サーバ用のLinuxやWindows Serverなどがあげられます。
ミドルウェア
「ミドルウェア」は、OSとアプリケーションの間で補助的な処理をするソフトウェアの一種です。
さまざまな環境でアプリケーションを利用できる状態にする役割をもっています。
代表的なミドルウェアには、データベース管理システム「Oracle Database」やWebアプリケーションサーバ「Apache」などがあります。
インフラ構築の流れ
ITインフラを整備する際には、その目的を最初の段階で決めておき、それぞれの工程完了をしっかり確認したうえで次に進むことが重要となります。
ここでは、インフラ構築の流れを詳しく説明します。
要件定義
はじめに、必要な機能や要望をまとめていきます。要望をまとめる際は、目に見える形で細かい部分までまとめていくと、問題点を認識することができます。
要望をまとめたあとは関係者全員で要望を検証(取捨選択)し、要件として落とし込んでいきます。要件を洗い出していく工程では一定以上の専門知識が求められます。
インフラ構築を外部委託する場合は、まず要件定義から入ってヒアリングをおこない、その会社が求めるITインフラがどのようなものかを明確にしていきます。
設計
最初に整理した要件定義に沿って、ITインフラの設計をおこないます。
具体的には設計書を作成し、アーキテクチャ(ITインフラの構造)の決定などをおこないます。
全体設計(基本設計)の完了後、詳細な機能設計に移ります。
構築
ハードウェアやソフトウェアを調達し、設計書に基づきシステムを構築していきます。
テスト
計画や設計書どおりにシステムが動作するか、正常動作および異常動作をテストします。
テストは粒度に応じて次の3パターンに分類できます。
単体テスト
まずは、それぞれの機器や設定を単独で検証するテストをおこないます。
最初の要件定義で定めた内容を満たしているかを確認していき、正常に動作しなかった場合はどこに問題があったのかを見つけて修正します。
結合テスト
次に、複数の機器を連携させ、一連の動作を確認するための結合テストをおこないます。
複数の機能が組み合わさると干渉しあって正常に動作しない場合があります。
システムテスト
最後に、本番を想定したシステムテストをおこないます。
単体テストや結合テストは正常に動作するかを確認するためのテストですが、システムテストでは処理速度や耐久性などを意識する必要があるため、システム性能のテストや負荷試験などをおこないます。
運用
テストに問題がなければ、実際にITインフラの運用を開始します。
なお、ITインフラ構築担当者と運用担当者が異なる場合がありますので、運用担当者を構築時点からプロジェクトに参画させるなど、運用習熟期間の設定を含め運用開始をスムーズにおこなうための取り組みが必要になります。
常時インフラの安定稼働を保つためには、サーバやネットワークの監視を欠かさずおこなうことが必要です。
問題や課題の解消
ITインフラは運用を開始して終わりではありません。
業務を円滑に進めるためには、障害対応の方法や発生した不具合の再発防止などをマニュアル化しておく必要があります。不測の事態や障害は突然発生するため、いつ何が起こっても慌てないよう、事前にマニュアルを準備しておきましょう。
インフラ構築で注意するポイント
インフラ構築の際にはどのような注意点があるのでしょうか?
ここでは、インフラ構築の際に注意するポイントをご紹介します。
目的やニーズの確認
インフラを構築するにあたり、無駄なコストが発生しないよう目的やニーズを明確にし、どのような課題をどのように改善していくかを計画する必要があります。
目的を明確にすることで進むべき方向を定めることができます。そのためには、5W2Hを明確にするのもポイントです。
Why(なぜ) |
なぜITによるシステム化をしたいのか |
What(なにを) |
ITシステムで何を実現したいのか |
Where(どこを) |
要望を満たすためにどの部分をITシステム化するのか |
Who(誰が) |
ITシステムは誰が利用するのか、誰が運用するのか |
How(どのように) |
ITシステムを使ってどのように実現するのか |
When(いつ) |
ITシステム化の期限やスケジュールはあるのか |
How much(いくら) |
ITシステム化するためにいくらの予算を組むのか |
5W2Hを明確にすることにより、漏れや曖昧などをなくし品質をあげることができます。
また、ただ実現したいことを聞き入れるのではなく、取捨することも必要です。仮に実現したいことでもインフラ構築の枠組みに収まらない場合は除外しなければなりません。
運用範囲の策定
近年、リモートでも業務をおこなう機会が増えてきていますが、運用範囲は社内にとどめるのか、在宅まで広げるのか、といったように運用範囲を決めることが重要です。
セキュリティ対策
外部からのハッキングやウイルス感染、情報漏洩に備えてセキュリティ対策をおこなうことが非常に重要です。
アクセス制限や利用制限をかけたり、ウイルス対策ソフトウェアの導入やセキュリティパッチ(修正プログラム)適用方法、データの暗号化や常時監視システムを構築するなどの対策をたてましょう。
インフラ運用で注意するポイント
インフラ運用の際にはどのような注意点があるのでしょうか?
ここでは、インフラ運用の際に注意するポイントをご紹介します。
障害発生時の対応
サーバ障害などが起きてしまうと、お客様へのサービス提供がおこなえなくなり、会社の利益が大きく損なわれます。その際、障害が起きたときの対応法をマニュアル化しておけば、被害を最小限に抑えられます。障害の解決方法を記載する場合、解決するために必要な操作手順を丁寧に記載しましょう。操作の具体的な説明は操作マニュアルに記載があるため、随時参照できるように対応させておく必要があります。自力で解決できない障害についても「サービス提供会社に問い合わせてください。」といった文面を記載するようにしましょう。
サーバの安定稼働
1台のサーバでシステム運用をしている場合、ハードウェア障害などでサーバがダウンしてしまう可能性があります。また、サーバ処理能力以上のアクセスがあった場合には、Webサイトのシステムが停止してしまう可能性があります。こうした事態に備え、いつでも安定的に稼働できるようにしておきましょう。
いずれの場合もロードバランサー(負荷分散装置)を設置することで自動的にサーバにかかる負荷を分散させられます。
保守管理・監視運用
ネットワークを快適に利用するためには、常にシステムを監視する必要があります。
これにより問題が起きる前に障害や不具合を発見し、対処することができます。
特にITインフラについては、24時間365日の対応を求められるため、監視・運用のシステムやサービスの導入などを検討すると良いでしょう。
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自社構築と外部委託はどちらがおすすめ?
ここまでITインフラの基礎と構築について解説してきました。
ここからは、ITインフラを構築する方法についてご紹介します。
会社のITインフラを構築する場合、自社でおこなう方法とプロに依頼する方法があります。
結論からいうと、自社内に十分に知識がない場合やなるべく失敗したくない場合は外部に委託し、社内に精通している人材がいて、かつ構築業務がおこなえるリソース確保がおこなえる場合は自社構築を試みるのがおすすめです。
ここでは両方のメリット・デメリットを詳しく説明します。
自社で構築する場合
自社構築のメリット
ITインフラを自社で構築する場合、外部の人間を入れずに自社のみで進められるため、要件変更やスケジュール変更がある程度自由におこなえ、かつ自社内にノウハウが蓄積されます。しかしながら、社内にITに精通した人材がいる場合のみのメリットになります。
また、外注する費用が発生しない分、コストを抑えられる可能性があります。
ただし、場合によっては高くつく場合もあるので注意が必要です。
自社構築のデメリット
ITインフラを自社で構築する場合、高い専門性が求められる作業であるため、高いスキルを備えたスタッフが必要です。十分なスキルがないまま進めてしまうと、そもそも何が必要でどうすればいいのかの要件定義からうまくいかなかったり、あとから修正が必要になったりすることも。
また、システムが出来あがっても不完全であったり不備があるケースもあります。
自社構築が向いているケース
社内に精通している人材がいて、かつ構築業務がおこなえるリソース確保がおこなえる場合は自社構築を試みるのがおすすめです。
外部委託、外注で構築する場合
外部委託のメリット
インフラ構築を外注する場合、基本的には要件定義の段階から最新の技術をもった専門家が対応するため、クオリティの高いITインフラが構築できるという安心感がメリットです。
さらに、インフラ構築だけでなくハードウェアの手配や設計等が必要な場合は、まとめて外部委託することで適切なシステムの選択や設定などを含めてプロに依頼できることもメリットの1つになります。
また、構築から運用まで担ってくれる企業が多く、保守などのアフターサービスが充実しているのも大きな魅力です。
外部委託のデメリット
インフラ構築を外注すると、その分の費用が発生します。とはいえ、実施するサービスの内容やアフターサポートまで考えると最終的な費用としては妥当なものになるのではないでしょうか。
また、情報を外部に共有するため情報が流出するリスクもゼロではありませんが、機密情報の取り扱いに関して厳格なポリシーを設定している企業を選ぶことでリスクを抑えられます。インフラ構築の際にセキュリティ対策までしっかり実施してもらえば、今後の情報流出やセキュリティリスクを下げられるでしょう。
失敗しない外部委託先の選び方
外部に委託する場合、どうすれば失敗せずインフラ構築を委託できるのでしょうか?
まずは、どこまでサポートしてくれるのか範囲を確認しましょう。
「インフラ構築だけでなく監視・運用までまかせたい」「クラウドへ移行したい」など課題や要望は企業によってさまざまです。そのため、将来的な業務委託内容も検討して、コストと提供サービスを鑑みて外部委託先を選びましょう。
また、技術や知識は豊富か、対応の早さ、柔軟さなどの対応力は十分にあるのか、信頼できる会社かどうかをチェックしましょう。
近年では、インターネットでの情報収集が当たり前となりましたが、サービス内容と金額だけで依頼する企業を決めるのではなく、数多くの実績があることを確認したうえで依頼することをおすすめします。
外部委託が向いているケース
自社のリソースだけではシステムに関する専門的な知識に欠ける場合、外部に委託するのがおすすめです。
また、インフラの運用にも人的リソースを消費するため、セキュリティ対策や運用管理などもあわせて依頼したい場合は外注することを推奨します。
インフラエンジニアに必要なスキルの習得方法
ITインフラを整備するためには、インフラエンジニアの存在が必要不可欠ですが、未経験者でもスキルを習得すれば、インフラエンジニアとして活躍できます。
ここでは、インフラエンジニアに必要なスキルの習得方法についてご紹介します。
本で勉強する
本を購入して独学で勉強することも可能です。インフラエンジニアになるためには、サーバやネットワークの知識、セキュリティの知識、シェルスクリプトの知識を身に着けることが必要です。
メリットとしては、自分の好きなタイミングで学習することができます。そして、他の勉強方法と比べて費用を抑えることができます。
デメリットとしては、本の内容だけでは理解が難しい部分が発生する可能性があり、わからない箇所が出てきたときには質問したくてもできません。
また、実機を使った演習や動作確認がおこなえないこともデメリットになります。
オンライン講座を受講する
オンライン講座を受講することで、エンジニアスキルを体系的に習得できます。
メリットとしては、パソコンを使用するためプログラミングが学びやすいことです。
デメリットとしては、本で勉強する場合と比較すると費用が高くなりやすいといえます。
また、あくまで独学なので、モチベーションはあがりにくいかもしれません。
専門学校に通う
専門学校に通う手段もあります。考え抜かれたカリキュラムなので効率よく勉強ができます。
メリットとしては、わからないことがあればすぐに質問できるため、独学よりも疑問点を早く解決することができます。
一方、自分の好きなタイミングで学習できない、受講費が高額なことがデメリットとしてあげられます。
資格を取得する
インフラエンジニアに関連した資格を目指して勉強することで、ITインフラについての知識を基礎から応用的なことまで対外的に学べます。
なによりも、インフラエンジニアとして必要な知識やスキルを身に着けたと証明できるので、おすすめの勉強方法です。
資格を取得するためには、受験料などの費用負担が発生してしまうことがデメリットになりますが、資格手当がある会社であれば受験費用などが支給されるケースもあります。
インフラ構築を外部委託するならエヌアイデイ
株式会社エヌアイデイは、50年以上にわたり システムインテグレーター(SIer)として金融機関や航空会社、自治体、各種メーカーなどさまざまな業種のお客様のITインフラの導入にまつわる業務を担ってまいりました。
ITプロフェショナルとしてインフラ構築のみならず、インフラの安定稼働を見据えた企画、要件定義・設計から、開発・構築、24時間365日の監視・運用・保守まで、一気通貫のサポートが可能です。
お客様の課題を解決するため、長年培った知識と経験による最適な提案をおこないます。
インフラ構築についてお悩みの方は、ぜひご相談ください。
まとめ
インフラ構築は、企業によるIT化の拡大やIT技術の進化により、需要が増えていくことが予想されています。
また、リモートワークが普及したことで、社内のITインフラは従来どおりで良いのか、もしくは、利便性を良くするために変更する必要があるのかを見直すための良い機会です。インフラ構築というと難しく聞こえるかもしれませんが、自社で構築する以外に外部委託など選択肢が増えているので、求められているシステムや状況に応じてベストな方法でインフラを構築してください。