基幹システムとは?選び方や種類、導入・構築方法を徹底解説
「基幹システム」は企業や組織の中核業務を管理するための重要なシステムです。
正しくシステムを選び、効果的に導入・構築することは、組織の効率性や生産性を向上させるために非常に重要です。また、経営状況の可視化・人為的ミスの削減など、多くのメリットが期待できます。
ここでは、基幹システムの選び方、具体的な種類、導入・構築方法について詳しく解説します。
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- 1.基幹システムとは?
- 1.1.業務システム・ERP・情報系システムとの違い
- 1.1.1.業務システムとの違い
- 1.1.2.ERPとの違い
- 1.1.3.情報系システムとの違い
- 1.2.基幹システムのクラウド化が注目される理由
- 1.2.1.リモートワークの浸透
- 1.2.2.導入が簡単(初期費用削減)
- 1.2.3.可用性の担保
- 1.2.4.ハードウェアの保守削減
- 2.基幹システムの種類
- 3.基幹システムのメリット
- 4.基幹システムの注意点・デメリット
- 4.1.基幹システムが止まるリスク
- 4.2.導入時に業務効率が低下するリスク
- 5.基幹システムの選び方
- 5.1.システム形態はどうするか
- 5.2.自社に必要な機能・仕様か
- 5.3.使いやすいか
- 5.4.安定稼働のためのサポートは十分か
- 5.5.セキュリティは万全か
- 6.基幹システムの導入・構築方法
- 7.基幹システム構築を外注する際の注意点
- 8.まとめ
基幹システムとは?
「基幹システム」とは、企業の経営の根幹を支えるためのITシステムのことを指します。
具体的には販売管理や財務会計、在庫管理など、企業活動に必要不可欠な業務を管理するためのシステムが基幹システムに該当します。
基幹システムが停止すると企業活動に致命的な影響をおよぼします。場合によっては、業務を継続することが困難になることもあるでしょう。
企業が業務を遂行するためには、堅牢で信頼性の高い基幹システムの導入が必要です。
業務システム・ERP・情報系システムとの違い
「業務システム」「ERP」「情報系システム」は、区別がつきにくい言葉ではあるものの、それぞれ「基幹システム」とは異なる意味で使われています。
ここでは、基幹システムと3つの言葉の違いについて解説します。
業務システムとの違い
「業務システム」について明確な定義はありませんが、基幹システム、情報系システム、ERPを含めて「仕事をおこなう際に使用するシステム」全般を指します。
しかし近年では、社内の業務を細分化した範囲で使われるシステム(停止しても企業全体の業務が停止するほどには大きな影響に至らないシステム)のことを業務システムと呼ぶケースが多くなりました。
ERPとの違い
「ERP(Enterprise Resource Planning)」は、企業全体の資源を統合的に管理するシステムです。販売管理や財務会計、人事労務、生産管理といった多数のシステムを統合していることから、「統合基幹業務システム」とも称されます。
幅広い業務データを一元管理できるため、既存の基幹システムをERPに置き換える企業が増えています。
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情報系システムとの違い
「情報系システム」とは、社内外のコミュニケーションを取ったり、事務作業の効率化をおこなったりするためのシステムを指します。例えば、メールやビジネスチャット、Web会議システム、グループウェアなどが情報系システムの代表例です。
基幹システムとは異なり、情報系システムが停止しても利便性が低下するだけで、企業の根幹に致命的な悪影響をおよぼすことはそれほど多くありません。ビジネスチャットが使えないときはメールや電話で連絡するなど、代替手段を見つけやすいのが特徴です。
基幹システムのクラウド化が注目される理由
近年、基幹システムのクラウド化を進める企業が増えている背景には、主に次のような理由があります。
リモートワークの浸透
日本国内で働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)への意識が高まり、リモートワーク化が浸透してきていることが一因にあります。インターネットを通じて社外からでも自社のデータにアクセスし業務を進めることができるため、オフィスに出社しなくても作業が可能となり、業務の効率化や生産性向上につながります。
出典:総務省「通信利用動向調査の結果」
導入が簡単(初期費用削減)
基幹システムのクラウド導入を進める場合、基本的には端末とインターネット環境があれば、クラウドは利用できます。サーバインフラ環境はクラウド事業者から提供されるサービスを利用することになるため、初期費用が削減できます。
可用性の担保
可用性(availability)とは、情報セキュリティの3要素であるConfidentiality(機密性)、Integrity(保全性)、Availability(可用性)のうちの一つで、「システムが動き続けることができる能力」を指します。
災害などの緊急事態が発生しシステムが壊滅的な状況になった場合、損害を最小限におさえるために備えること、または、速やかに復旧できるよう対策をおこなう必要があります。
クラウドであれば、インフラ部分を管理するクラウド事業者が冗長化を担保しており、ユーザー企業が意識しなくても一定の可用性を担保できるケースが多くなっています。そのためオンプレミスよりも可用性が高く、有事の際のリカバリーの早さも期待できます。
ハードウェアの保守削減
クラウドでは、サーバやネットワークなどインフラの運用管理やメンテナンスをクラウド事業者に任せることができるため、従来、ユーザー企業側でおこなっていた運用保守の負荷を削減することができます。
基幹システムの種類
ここでは、代表的な基幹システムをご紹介します。
生産管理システム
「生産管理システム」は、工場などの現場における生産業務を効率化するためのシステムです。
原材料の調達計画や製品の生産計画、作業指示や進行管理など、現場の作業をスムーズにおこなううえで必要不可欠な機能が備わっています。
また、製品の原価管理や販売管理、在庫管理など、後述する「販売管理システム」や「在庫管理システム」に相当する機能が搭載されている生産管理システムなどもあります。
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販売管理システム
「販売管理システム」は、生産した製品の原価管理や販売管理をおこなうためのシステムです。
販売のなかには、原材料の発注や製品の受注情報の他、入出荷管理や取引先への請求書発行・入金確認などの一連の処理が含まれます。
販売に関わる一連の処理を統合的に管理し、業務を効率化することを目的としています。
在庫管理システム
「在庫管理システム」は、製品を生産するための原材料・部品や、生産済みの製品の在庫を管理するためのシステムです。
通常は生産管理システムや販売管理システムと連携し、製品が注文されると、自動的に在庫の引き落としがかかるように設計するのが一般的です。
在庫管理システムを活用して在庫を正確に把握することで、過剰在庫による廃棄リスクや在庫不足による販売機会の損失を防ぐことができます。
受注管理システム
「受注管理システム」は、取引先からの注文を管理するためのシステムです。
Web上で取得した注文データだけでなく、電話やFAXといったアナログな注文管理も含めて統合的に管理することで、自社の受注処理を効率化できます。
取引先が多い現場や、注文を受け付ける媒体が多岐にわたる現場では、受注管理システムの活用が特に有効です。
財務会計システム
「財務会計システム」は、経理業務を効率化するためのシステムです。
財務諸表の作成機能をはじめとして、企業の会計状況を明らかにするための書類を作成する機能がそろっています。
財務会計システムを活用することで、一から作成すると手間のかかる財務会計に関するさまざまな書類を簡単に作成できます。
労務管理システム
「労務管理システム」は、自社の従業員の勤怠管理や社会保険の管理をおこなうためのシステムです。
福利厚生を用意している企業においては、福利厚生管理をおこなうこともあります。
従業員から回収しなければならない情報(例えば勤怠情報など)がある場合も、従来のように紙で提出するのではなく、パソコンやスマートフォンから入力・送信するだけで自動的に収集できるため、担当者の手間を大きく削減できます。
基幹システムのメリット
ここでは、基幹システムのメリットについて詳しく見ていきましょう。
業務の効率化
基幹システムの代表的なメリットとして、業務の効率化があります。これまで人の手で処理していた業務をシステムに任せることで、自動的に情報を転記したり、データを集計したりできるようになり、処理にかかる時間を大幅に削減できます。
特に手順の決まっている定型業務の処理に高い効果を発揮するため、従業員をより生産性の高い他の業務に割り当てることが可能になります。
業務の標準化
基幹システムの導入は、業務の標準化にも役立ちます。人間が業務を処理する場合は、個々の従業員の熟練度によって成果が左右されやすくなります。ベテランの従業員に比べると、入社したばかりの新入社員は十分な成果を出せない可能性が高いでしょう。
基幹システムを導入することで、手順に沿って業務をおこなえば誰でも一定の成果を出せるようになるため、スキルのばらつきをおさえる効果が期待できます。
経営状況の可視化
基幹システムを導入すると、売上情報や在庫状況、債務情報など、業務上のあらゆるデータを可視化できるようになります。これもメリットの一つです。
経営状況をリアルタイムに把握し、迅速な意思決定が可能になります。経営状況を正確に把握していないと、無駄なコストが発生していても気がつけなかったり、売上が悪化していてもすぐに把握できなかったりするため、初動対応が遅れがちになります。データを活用して経営状況を可視化し、将来的な見通しを立てて計画的な経営をおこなうことが大切です。
人為的ミスの削減
基幹システムを導入することで、人為的ミスの削減にもつながります。
人の手で業務を処理する以上、どれほど注意していてもミスを完全になくすことは難しいでしょう。
しかし、システムによって自動的に業務を処理させれば、注意不足からのミスを削減できます。
基幹システムの注意点・デメリット
基幹システムを導入する場合、次のような点に注意が必要です。
基幹システムが止まるリスク
基幹システムは、企業活動に必要不可欠なシステムであるため、万が一、システムが停止してしまうと業務を継続することができなくなったり、お客様にサービスを提供できなくなったりするリスクが発生します。
「基幹システムは安定して稼働させ続けなければいけない」という点に注意が必要です。
リスクを未然に回避するため、機器の二重化やバックアップの取得、障害検知体制の構築や速やかに復旧するための手順をあらかじめ決めておくなどの対応が必要です。
導入時に業務効率が低下するリスク
基幹システム導入後、オペレーションの変更により一時的に業務効率が低下するリスクを想定しておくことが求められます。特に、これまですべての業務をアナログで処理してきた現場では、システムに対する抵抗感や不慣れなどが原因で、運用が軌道に乗るまでには時間がかかる可能性があります。
業務マニュアルの作成や事前の研修などをおこなって、できるだけスムーズに基幹システムを活用した運用が開始できるように準備を整えることが大切です。
基幹システムの選び方
ここでは、基幹システムの選定時に注目したい5つのポイントをご紹介します。
システム形態はどうするか
基幹システムの導入形態には、オンプレミス型とクラウド型の2種類があります。
自社の業務体制や予算感など、さまざまな面を考慮して自社に適した形態を選びましょう。
オンプレミス型
オンプレミス型は、自社でサーバを購入・構築して運用する形態のことです。カスタマイズ性の高さが特徴であり、自社独自の運用ルールなどが細かく決められている場合に適しています。
また、インターネットに接続せずに運用できるオンプレミス環境はセキュリティが高いため、研究機関や金融機関などによく用いられています。
一方、機器の二重化や将来の利用量を見据えたハードウェア導入など、サーバ購入費用が高額になりやすく、環境の構築に時間がかかるというデメリットもあります。さらに自社で運用・保守をおこなう必要があるため、専門知識を持った人材が不可欠です。
クラウド型
クラウド型は、インターネットを経由して、クラウド事業者のサーバを使用する形態のことです。自社でサーバを用意する必要がなく、すぐにシステムを使い始めることができるため、中小企業やスタートアップ企業には強い味方となります。
また、利用した分だけ料金を払う従量制の課金体系が主流なので、コストの最適化を図りやすいというメリットもあります。
一方、クラウドサービスの仕様によってカスタマイズできる範囲が限られるので、自社の目的にあったものを選びましょう。
クラウドやサーバ構築のポイントについては下記で詳しく紹介しています。ぜひ、あわせてご覧ください。
あわせて読む>> クラウドとは?基本やオンプレとの違いメリット・デメリットについてわかりやすく解説
あわせて読む>> サーバ構築とは?基礎から種類、クラウドの構築手順まで初心者でもわかりやすく解説
自社に必要な機能・仕様か
基幹システムを選ぶ際は、自社に必要な機能・仕様を備えているかどうかをよく検討しましょう。
機能が多いほど優れたシステムのように感じてしまいやすいものですが、システムが高い効果を発揮するためには「自社の目的を達成するための機能と仕様がそろっていること」が大切です。そのためには、基幹システムを導入して達成したい自社の目的や解決したい課題を明確にしておきましょう。
使いやすいか
基幹システムは毎日使用するシステムであるため、使いやすさは重要なポイントの一つです。
データ入力やファイルの出力など、よく使用する機能が使いやすく作られているかどうかを慎重に検討しましょう。使いにくいシステムを導入してしまうと、以前よりもミスが増えてしまったり、作業の効率が落ちてしまったりするリスクが生じます。そのため、誰にでも使いやすいシステムの導入を心掛けましょう。
安定稼働のためのサポートは十分か
基幹システムは安定して稼働させ続けなければいけない、ということが大前提にあるため、ベンダーのサポートも重要です。システムの機能性だけでなく、万が一の事態に備えた十分なサポートが提供されているかを確認しましょう。
セキュリティは万全か
基幹システムはお客様や社員の個人情報や社内の機密情報などもあつかうため、セキュリティが万全かどうかは、自社の大切なデータを守るうえで外せないポイントです。
不正なアクセスや情報漏洩を防ぐためには、高度なセキュリティを実現しているシステムを選びましょう。
基幹システムの導入・構築方法
ここからは、実際に基幹システムを導入・構築するときの流れについて解説します。
企画
基幹システムの導入が成功するかどうかは、企画段階で導入の目的を明確化し、自社に適した方向性を定義できるかに大きく左右されます。
そのため、はじめに基幹システムを導入してどの業務領域を改善したいのか、どういった成果を出したいのかを明らかにしたうえで、その目的を達成するためにはどのようなシステムが必要なのかをじっくりと検討します。具体的には、どの業務領域に基幹システムを導入するのかを決定しましょう。
製品・ベンダーの選定
企画が固まったら、製品・ベンダーを選定します。
自社の事業形態に適した製品(スクラッチ開発、パッケージ、サービス含む)を選定しなくてはなりません。また、自社のリソースのみで基幹システムの構築がむずかしい場合や失敗したくない場合は、プロに依頼することをおすすめします。基幹システムの設計・構築から運用・保守まで担ってくれるベンダーを選定すると良いでしょう。
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要件定義
自社に必要なシステムの要件を決定します。改善すべき課題を解決するためにはどのような機能や仕様が必要なのかを決めていきます。そのためには、業務フローを洗い出し、場合によっては、より効率的な業務フローに修正する必要があります。
基幹システムは構築後の仕様変更が難しいため、丁寧に時間をかけて検討をすすめていきましょう。
設計・構築
要件定義に沿って、設計・開発をおこなっていきます。自社開発の場合はエンジニアが設計・開発工程を担当しますが、ベンダーに依頼する場合は基本的にベンダーの担当領域になります。
企業規模にもよりますが、数ヵ月から1年以上の期間を要することもあるため、この機会に業務マニュアルの作成や研修を実施し、社内の環境整備に取り組むことをおすすめします。
テスト
基幹システムを運用する前に各機能が正常に動作するかどうかを確認するためのテストをおこないます。
テストと修正を繰り返し、処理やデータの連携に問題がないか、品質が担保されているか、を確認しましょう。
運用保守
テストが完了し、本稼働できる状態になったら、実際に現場で基幹システムの運用を開始します。運用しながら、効果測定をおこなうことも大切です。基幹システムを導入して課題が解決されたのか、改善がみられなかった場合は、今後の対応などを検討することも必要でしょう。
また、保守や監視などの体制を整えて安定的なシステム運用を実現しましょう。
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基幹システム構築を外注する際の注意点
基幹システムの構築を外注する際は、開発実績や技術力、さらにコミュニケーション能力や課題解決力などのチェックを綿密におこない、信頼性と実績のある委託先を選びましょう。
過去の開発実績が少ないベンダーは、十分な開発力がない可能性があるため、避けたほうが望ましいでしょう。自社の業務領域の開発実績が豊富なベンダーを選ぶと、現場に寄り添った使い勝手の良いシステムを構築してくれる可能性が高くなります。加えて、コミュニケーション能力を見極めることも大切です。コミュニケーションがうまくとれていないと認識のズレが発生するリスクが高まります。
また、構築後のアフターケアについても確認しておきましょう。運用や保守などのサポートが充実したベンダーを選定すると安心感があります。
まとめ
基幹システムは企業の根幹を支える重要なシステムであり、業務の効率化や標準化、経営状況の可視化などのメリットがあります。
しかし、導入には注意点もあるため、適切な選定と導入・構築方法の選択が成功の鍵となります。
基幹システムの構築を外注する場合には、信頼性のあるベンダーとのコラボレーションやプロジェクト管理が重要です。
近年では、基幹システムや情報系システムを一元管理するERPを導入する企業が増加しています。基幹システムやERPの導入は企業の成長と競争力向上に欠かせない要素であり、慎重な検討と実行が求められます。
基幹システムやERPの導入・構築についてのお困りごとや、もっと詳しく知りたいという場合は下記で詳しく紹介しています。ぜひ、あわせてご覧ください。
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