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クラウド移行のメリットは?

クラウド移行のメリットは?オンプレミスからの移行手順や注意点を解説

これまでオンプレミスで構築していた古い社内システムを、クラウドへ移行する企業が増えています。
クラウドに移行することでコストを削減できるなどのメリットもありますが、オンプレミスで利用していた業務をクラウドへ移行するのは不便な部分もあります。クラウドへ移行する前にそれらの特徴をよく理解してギャップを埋め、スムーズに移行できるようにしましょう。

ここでは、社内システムをクラウドへ移行する際のメリット・デメリット、移行を判断するポイント、移行の手法や手順などを紹介します。


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  1. 1.まずはクラウドとオンプレミスの違いを確認
    1. 1.1.クラウドとは?
    2. 1.2.オンプレミスとは?
  2. 2.クラウドへ移行するメリット
    1. 2.1.導入のハードルが低く、導入後すぐに始められる
    2. 2.2.コストが抑えられる
      1. 2.2.1.サーバ機器などのメンテナンス維持費の削減
      2. 2.2.2.運用・監視のための人件費の削減
      3. 2.2.3.従量課金制による料金の適正化
      4. 2.2.4.サーバ機器などを設置するスペースの削減
    3. 2.3.障害対応時に自社で復旧する必要がない
    4. 2.4.時間や場所を問わず利用できる
    5. 2.5.容量の拡張が柔軟にできる
  3. 3.クラウドへ移行するデメリット
    1. 3.1.自由にカスタマイズしにくい
    2. 3.2.自社のシステムとの連携が難しい場合がある
    3. 3.3.パブリッククラウドの場合、他企業の影響を受ける可能性がある
  4. 4.クラウド移行かオンプレミス継続かを判断するポイント
    1. 4.1.コスト
    2. 4.2.障害対応
    3. 4.3.拡張性
    4. 4.4.カスタマイズの自由度
    5. 4.5.セキュリティ
  5. 5.クラウド移行をおすすめするケース・しないケース
    1. 5.1.クラウド移行をおすすめするケース
    2. 5.2.クラウド移行をおすすめしないケース
  6. 6.システム環境をクラウドに移行する4つの方法
    1. 6.1.P2C
    2. 6.2.P2V
    3. 6.3.V2C
    4. 6.4.P2V2C
  7. 7.アプリケーションをクラウドに移行する3つの方法
    1. 7.1.Lift & Shift
    2. 7.2.Improve & move
    3. 7.3.Rip & Replace
  8. 8.オンプレミスからクラウド移行の手順
    1. 8.1.設計
    2. 8.2.検証
    3. 8.3.移行
    4. 8.4.運用
  9. 9.クラウド移行時の注意点
    1. 9.1.既存システムの要件がクラウドに適しているか確認する
    2. 9.2.セキュアなネットワークを確保できるか確認する
    3. 9.3.関係者との連携を密におこなう
    4. 9.4.費用を検証する
    5. 9.5.移行サービスツールを有効活用する
    6. 9.6.旧環境の廃棄を急がない
  10. 10.AWSへの移行方法
    1. 10.1.AWSへの移行にあたり検討が必要なもの
      1. 10.1.1.バージョンが古いOS、ミドルウェア
      2. 10.1.2.アプリケーションへのIPアドレスやIDのハードコーディング
      3. 10.1.3.クラスタや負荷分散設定
    2. 10.2.AWS移行で利用するツール
      1. 10.2.1.仮想マシンへ移行する場合
      2. 10.2.2.ネットワーク経由でデータ転送をおこなう場合
      3. 10.2.3.データベースの移行をおこなう場合
  11. 11.クラウド移行の事例 
    1. 11.1.SBIいきいき少額短期保険株式会社
    2. 11.2.全日空商事株式会社
  12. 12.まとめ


>>「クラウド移行」に関するお悩み・ご相談はこちら


まずはクラウドとオンプレミスの違いを確認

クラウドへの移行を検討する前に、まずはクラウドとオンプレミスそれぞれの特徴と違いを確認しておきましょう。


クラウドとは?

クラウドとは、手元の端末からインターネットを経由して、ネットワーク上で提供されるアプリケーションやインフラを利用できるサービスです。
業務でクラウドを活用するときには、クラウドサービス上で提供されるアプリケーションを利用したり、システムを開発して利用したりします。他社にサービスとして提供することも可能です。


オンプレミスとは?

オンプレミスとは、社内にサーバを設置してネットワークを構築する方法です。端末も社内ネットワーク内にあります。導入コストは高くてもカスタマイズができ、かつセキュリティ対策もしやすい方法です。

クラウドとオンプレミスの詳細は、次の記事でも紹介しております。あわせてご覧ください。


あわせて読む>> クラウドとは?基本やオンプレミスとの違い、メリット・デメリットをわかりやすく解説


クラウドへ移行するメリット

オンプレミスで構築していた社内システムをクラウドに移行すると、次のようなメリットを得られます。


導入のハードルが低く、導入後すぐに始められる

基本的には端末とインターネット環境があれば、クラウドは利用できます。それ以外のサーバ、ネットワーク、ネットワーク機器などのハードウェアやインフラもクラウドサービス側が提供します。
また、SaaSを利用する場合は、必要な設定をおこなえば基本的には開発作業なしで、素早く導入ができます。


※SaaS:“Software as a Service”の略で、サービス提供側がアプリケーションの範囲まで保守などをしてくれるクラウドサービス


コストが抑えられる

導入時にハードウェアが必要ないこと、また、月額もしくは年額で利用料金を支払うことになり、一括購入する必要がないことなどから、導入コストはかなり抑えられます。
他にも次のような要因から、クラウドは比較的低コストで利用可能です。


サーバ機器などのメンテナンス維持費の削減

クラウドでは、サーバ機器やインフラなどのメンテナンスはクラウドサービス側が担当します。ユーザー企業がおこなう必要がないので、その分のコストを削減できます。
クラウドを利用すると、月額や年額のランニングコストはかかりますが、メンテナンス維持費は削減されるので、費用対効果は見込めるでしょう。


運用・監視のための人件費の削減

サーバやインフラなどの運用管理やモニタリングもクラウドサービス側でおこなうので、ユーザー企業はその分の人件費を削減可能です。


従量課金制による料金の適正化

クラウドの料金は使った分だけ支払う「従量課金制」です。利用した容量に合わせてコストを最適化できます。
そのため、余裕を持って多めに容量を確保する必要はなく、その分多めにコストがかかることもありません。


サーバ機器などを設置するスペースの削減

サーバやネットワークはクラウドサービス側が提供するので、社内にサーバやネットワーク機器は要りません。その分スペースの削減が可能となり、サーバ設置用などにスペースを借りていた場合はコスト削減になります。


障害対応時に自社で復旧する必要がない

クラウドでは、障害発生時の対応責任箇所がクラウドサービスの形態によって異なります。
例えばSaaSでは、アプリケーションの範囲までクラウドサービス側に管理責任があるため、ユーザー側で対応することは基本的にはありません。

しかし、IaaSとしてクラウドを利用する場合、OSより上に位置するソフトウェア領域に関する障害は、ユーザー側で対応する必要がありますので気を付けましょう。クラウド環境設計時に責任共有モデルを考慮した設計をおこなうことを推奨します。


※IaaS:“Infrastructure as a Service”の略で、サービス提供側がサーバの範囲まで保守などをしてくれるクラウドサービス。


時間や場所を問わず利用できる

クラウドにはインターネット環境さえあればいつでもアクセスできるため、時間や場所、端末の種類を問わずに利用可能です。これはリモートワークの推進にもつながります。


容量の拡張が柔軟にできる

クラウドでは、ユーザー企業が必要に応じて契約内容を変更できます。例えば、CPUをアップグレードしたり、アクセス数に応じて使用する容量を増減したりすることが可能です。


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クラウドへ移行するデメリット

ここまでクラウド移行のメリットを解説してきました。一方、クラウドへの移行には次のようなデメリットもともないます。ここからは、移行を検討する際に注意すべきポイントを説明していきます。


自由にカスタマイズしにくい

クラウドでは、基本的に提供されるサービスをそのまま利用します。導入時に多少の設定やカスタマイズもできますが、あくまでサービスの範囲内でしかおこなえません。そのため、クラウド移行後はこれまでと同じ環境を再現できない場合があります。

ただし、IaaSやPaaSはカスタマイズに制限はあるものの、なかには用途に合わせて利用できるOSを変更できるケースもあります。自社独自システムをクラウドへ移行できる可能性もあるので、事前に確認しておきましょう。


※PaaS:“Platform as a Service”の略で、サービス提供側がOSやミドルウェア(会社による)の範囲まで保守などをしてくれるクラウドサービス。


自社のシステムとの連携が難しい場合がある

SaaSでは、カスタマイズできる部分が限られているため、連携できるシステムやアプリケーションにも限りがあります。Microsoft Officeなどの定番アプリケーションは基本的には連携可能ですが、ユーザーの少ないアプリケーションや、自社に合わせて構築した独自システムなどは、連携できないことも多いです。

現行システムと連携できない場合は、SaaS上のアプリケーションを代わりに利用するなど、他の方法を検討しましょう。


パブリッククラウドの場合、他企業の影響を受ける可能性がある

クラウドの基本は「パブリッククラウド」といい、オープンなインターネットスペースでサーバ機器やインフラを他のユーザーと共用しています。コストは低いですが、共有する分セキュリティリスクはあがります。

例えば、サーバ機器やインフラを共用している他のユーザーがサイバー攻撃を受けると、その影響を受けることもあります。
セキュリティのリスクを軽減したいなら、コストが少しかさみますが、重要なシステム部分は自社で所有できるハードウェアと回線サービスを導入するなど、検討しておくと良いでしょう。


クラウド移行かオンプレミス継続かを判断するポイント


クラウド移行かオンプレミス継続かを判断するポイント


クラウド環境に移行するか、現在のオンプレミス環境を維持するかで迷っている場合は、次のようなポイントで判断しましょう。


コスト

クラウドへ移行すればコストが下がることが多いです。これはハードウェアの準備や保守・運用などが不要になり、利用料金も最適化されるからです。
しかし、クラウドに移行することで発生するコストもあります。例えば、クラウドは毎月もしくは毎年の利用料金がかかります。さらにSaaSであれば導入時の教育などの費用も必要です。運用を開始しても、予想よりもアクセス数やデータ通信量がかかり、請求が膨らむこともあります。

ですが、これらの課題はサービスプランを適切に選ぶことで基本的には回避可能です。
クラウド移行前にはこういった課題が発生することも想定し、どの程度のコストがかかるか見積もりを取ってから、移行するかどうかを判断しましょう。


障害対応

クラウドでは、障害発生時の対応は基本的にはクラウドサービス側がおこないますが、ユーザー側が対応しなければならない場合もあります。例えばIaaSや一部PaaSの責任共有モデルの場合、OSより上のソフトウェア領域が絡む障害はユーザー側で対応となります。障害対応の範囲がどのようになっているか忘れずに確認しましょう。

障害に対応できる人員の確保・育成にリソースを割けない状況であれば、SaaSのようなクラウドサービス側の責任範囲が広い形態へのクラウド移行の検討をおすすめします。

ただし、クラウドサービス側に障害対応責任があるということは、障害が発生しても対応を自社でおこなえず、クラウドサービス側の対応を待つことにもなります。自社で対応したい、できるだけ早く対応したいと考えている企業には、クラウド移行は向いていないでしょう。


拡張性

クラウドでは、サーバの台数やストレージ容量、アクセス数などは、利用量に合わせて変更できます。待ち時間や複雑な手続きは不要で、ユーザー企業自身で管理画面から変更できます。
しかしオンプレミス環境では、あらかじめ準備していた以上の容量やアクセス数には対応できません。新しくハードウェアを準備し、ソフトウェアも修正する必要があります。

拡張性を求めている場合は、クラウド移行を選択すると良いでしょう。


カスタマイズの自由度

SaaSでは、提供されるアプリケーションを大幅にカスタマイズすることは難しい傾向にあります。そのため、独自に細かくカスタマイズをおこないたい場合は、クラウド移行は厳しいかもしれません。


セキュリティ

クラウドでは、提供している部分でのセキュリティ対策やサイバー攻撃への対応もクラウドサービス側が担当します。そのため、ユーザー企業が独自のセキュリティ対策をおこなうことは基本的にはできません。
クラウドサービス側のセキュリティ対策は基本的には十分されていますが、独自の設定を加えたい場合は、クラウド移行は向かないでしょう。

ただし、IaaSや一部PaaSの場合、ユーザー側の管理責任範囲内で設定不備などが起因となりセキュリティ事故が生じた際は、ユーザー側での対応が必要となります。自社内での対応が難しい場合は、よりクラウドサービス側で障害などの対応をしてもらえるSaaSのサービスを選択し、クラウド移行を検討するのもひとつの手です。


クラウド移行をおすすめするケース・しないケース

ここまでに解説してきた特徴から、クラウド移行に向いている企業と向いていない企業の傾向をご紹介します。


クラウド移行をおすすめするケース

クラウド移行するきっかけは、各々の置かれている環境だけでなく、社会背景などさまざまな事情があるかと思います。日頃の業務で次のようなニーズがある場合、クラウド移行をおすすめします。

  • 導入やメンテナンスなどのコストを抑えたい
  • 運用保守にコストをかけられない、人材がいない
  • キャンペーンなどの影響で、利用容量やアクセス数が変動しやすい
  • リモートワークを推進したい
  • 自社でのセキュリティ対策に不安を感じている

コストを抑えたい場合や拡張性を求めている場合は、クラウドへ移行することで得られるメリットが多いでしょう。


クラウド移行をおすすめしないケース

場合によっては、一概にクラウド移行をおすすめするとはいえないケースもあります。特に以下のケースに該当する場合、クラウド移行はおすすめできません。

  • 自社のセキュリティポリシーに合わせて、セキュリティ対策を強化したい
  • 大がかりなカスタマイズをおこない、自社の業務に合わせたい
  • 既存のシステムと連携させたいが、できそうにない

自社に合うよう細かく設定をしたい場合は、無理にクラウド移行を進めないほうが良いでしょう。


システム環境をクラウドに移行する4つの方法

オンプレミスからクラウドにシステム環境を移行する場合、移行方法は4種類あります。


P2C

P2C(Physical to Cloud)は、物理サーバを直接クラウド環境に移行する方法です。物理サーバにあるデータを、仮想マシンへ素早く移行できます。ただし、比較的難易度の高い方法ということもあり、あまり使われていません。


P2V

P2V(Physical to Virtual)は物理サーバを仮想サーバに変換する方法です。この変換はオンプレミス環境でおこなわれることが多くなっています。

特筆すべき点は、迅速かつ低コストで新しい環境に移行できたり、古いOSで構成されているシステムでも移行しやすかったりする点です。ただし、古いシステムを使い続けるのに使用した場合は、あくまでシステムの延命策なので、どこかのタイミングで新環境へのリプレースを考える必要があります。


V2C

V2C(Virtual to Cloud)は、オンプレミス環境の仮想サーバをクラウド環境に移行する方法です。P2Vで作成したオンプレミス環境の仮想サーバを、さらにV2Cで移行する方法がよく使われています。

スモールスタートができる点が大きなポイントであり、利用者の負担を軽減できます。クラウドを利用することによる開発スピードや、インフラ側の手間の省略などが可能なため、近年移行が増加傾向にあります。


P2V2C

P2V2C(Physical to Virtual to Cloud)は、物理サーバを仮想サーバに変換したあと、クラウド環境に移行する2段階の方法です。移行ツールを利用して、P2VとV2Cの組み合わせを一度でおこないます。

懸念点としてあげられるのが、ハードウェアの依存にひもづくトラブルの発生です。実際に導入する際は、メリットだけでなく、万が一の事態への対応方法も知っておきましょう。


アプリケーションをクラウドに移行する3つの方法

現行のアプリケーションをクラウドに移行するには、次のような方法を利用します。


Lift & Shift

Lift & Shiftは、これまでのアプリケーションを一度そのままクラウドに移行(Lift)し、そのあとで必要な修正・最適化(Shift)をおこなう方法です。

オンプレミス環境でのシステムはクラウド環境に合わせて最適化しますが、アプリケーションの構成は大きく変わりません。そのため、手間が最小限で済みます。


Improve & move

Improve & moveでは、オンプレミス環境で一度クラウド環境に合わせてアプリケーションを修正します。そのあと、修正したアプリケーションをクラウドに移行する方法です。

クラウドに最適化したアプリケーションを作成するため、アプリケーションの構造や運用方法は大幅に変更されることもあります。


Rip & Replace

現行のアプリケーションにとらわれず、クラウド上に新しくクラウドネイティブなアプリケーションを作成し、置き換える方法です。現行のアプリケーションの問題点を引継ぎません。

現行のシステムのOSやミドルウェアのバージョンがあまりに古い場合は、アプリケーションも古いものが多いので、新しく作成するほうが効率的です。


オンプレミスからクラウド移行の手順


オンプレミスからクラウド移行の手順


オンプレミス環境からクラウド環境への移行は、次のような手順でおこないます。


設計

クラウドへの移行を検討する段階で、プロジェクトチームを結成し、移行計画を設計します。

最初にクラウドに移行するための目標や目的を設定しましょう。移行の必要性があるのか、移行でどういう課題を解決できるのかを見直し、どの業務をどこまでクラウドに移行するのかを決定します。そして、整理した目標や目的をもとに移行先のクラウドサービスを選定するようにしましょう。

移行する範囲と移行先が決まったら、その部分の業務とシステムの棚卸しをおこないます。どういう業務をおこなう必要があるのか、また利用するシステムのハードウェア、ソフトウェア、認証情報、ドキュメントなどの情報をまとめておきましょう。

現状の課題や目標について、あとから抜け漏れが出てこないよう事前に整理することが重要です。計画の設計が完了したら、移行方法やスケジュールなどを決定していきましょう。


検証

移行計画を設計したら、計画は実現可能なものかを検証します。その際は次のようなポイントを確認しましょう。

  • 移行作業が通常業務、他の部署に与える影響はあるか
  • 移行先のサービスだけで必要なシステムを構築できるか
  • 移行方法・手順は適切か
  • データベースのデータのクレンジングはどの程度必要か
  • スケジュールのゴールやマイルストーンに問題はないか
  • 切り戻しなどの余裕を持たせたスケジュールか
  • 人員は足りるか、配置は適切か


移行

計画にしたがい、移行作業をおこないます。データの移行など、時間のかかる作業もあるので気を付けましょう。
必要なシステムを構築してデータを転送したら、システムの切り替えをおこないます。すべての作業を終えたら、テストをおこない、問題がないか確認します。


運用

テストで動作を確認したら、保守・運用の段階に入ります。
ただし、旧システムは一定期間保存し、新しいシステムに問題がないことを確認してから廃棄しましょう。


クラウド移行時の注意点

クラウドへ移行する場合には、次のような点に注意が必要です。


既存システムの要件がクラウドに適しているか確認する

移行したい既存のシステムがクラウドでの利用に適しているか確認します。クラウドはどのような企業でも向いている訳ではありません。
先述の「クラウド移行をおすすめしないケース 」に当てはまる場合は、クラウド移行ではなく現行のシステムを改善する、システムをクラウドサービスに合わせるなどの対応を考える必要があります。


セキュアなネットワークを確保できるか確認する

移行前のシステムがオンプレミスの場合、クローズドなネットワークで高いセキュリティが確保されていることが多いです。しかし、クラウドに移行するとオープンなインターネットを経由してアクセスするため、セキュリティリスクが高まります。

しかもクラウドでは、セキュリティ対応の多くはクラウドサービス側が担当するので、ユーザー企業が設定できる部分は少ないのが現状です。そのため、できるだけ強固なセキュリティ対策をおこない、セキュアなネットワークを確保しているクラウドを選びましょう。


関係者との連携を密におこなう

クラウドへの移行は大きなプロジェクトなので、関係者の人数も多くなります。
こういった状況でスムーズに移行作業を進めるためには、関係者とのコミュニケーションや連携が不可欠です。
プロジェクトチームを組織して事前の検討や打ち合わせを十分におこない、想定外のトラブルにも対処できるようにしておきましょう。場合によっては、クラウドへの移行をサポートしてくれる業者の利用もおすすめします。


費用を検証する

クラウド移行にかかるコストは、導入費用や定期的に支払う利用料金だけではありません。導入したクラウドがスムーズに使えるよう、機能を追加する費用や従業員向けの教育費も発生します。加えて、物価高の影響によってサービスの利用料金が値あがるケース  も出てきています。それらを加味して費用の検証が必要となります。   

さらにデータ通信量やアクセス数が予想外に増加すると、その分の利用料金も増加するので、費用がより高くなる可能性もありえるでしょう。移行前には、必要な機能や容量から利用料金を検討し、クラウド移行で発生する費用と導入で削減される費用を把握しておきましょう。


移行サービスツールを有効活用する

現行のシステムをクラウドに移行するには、多くの作業が必要であり、データの移行には長い時間がかかります。
そのため、多くのクラウドサービスでは移行ツールが用意されています。移行ツールを使えばある程度の手間を省くことができ、スムーズに作業を進めることが可能です。

移行ツールにもさまざまな種類があります。現行のシステムと移行先で構築するシステムを比べ、必要なツールは何か、どのデータをいつどのように移行するかなどの計画を立てておきましょう。


旧環境の廃棄を急がない

クラウドへの移行が済めば、現行のシステムは旧環境となり実務のうえでは必要なくなります。いずれ廃棄しますが、一度廃棄すると 復旧はできません。そのため、クラウドへの移行後もしばらくは残しておきましょう。旧環境のシステム廃棄するタイミングは、移行後のシステムに不具合やトラブルがないかを確認したあとが望ましいです。

場合によっては、一定の機能をオンプレミス環境に残してクラウドと併用することもあります。


AWSへの移行方法

クラウドサービスの中でも、AWSに移行する場合を紹介します。


AWSへの移行にあたり検討が必要なもの

AWSに移行する前に、次の項目を検討しておく必要があります。


バージョンが古いOS、ミドルウェア

クラウドのOSやミドルウェアは、常に最新バージョンを使うことができます。
しかし現行のシステムで使っているOSやミドルウェアのバージョンが古い場合は注意が必要です。アプリケーションも古い環境に対応しているため、クラウドでの新しいバージョンに対応できない場合があります。

移行前に動作テストをおこない、場合によってはアプリケーションの更新や修正、または別のアプリケーションへの変更が必要です。


アプリケーションへのIPアドレスやIDのハードコーディング

社内でしか利用しないアプリケーションでは、アプリケーションのコードにIPアドレスやハードウェアなどのIDがハードコーディングされている場合もあります。

ハードコーディングとは、変化や更新のない定数データをソースコードに直接書き込むことです。あとからデータを変更したり、呼び出したりするときに不便なだけでなく、セキュリティ上も問題があります。このような場合、クラウドへの移行をおこなうときにアプリケーションを修正しなければなりません。


クラスタや負荷分散設定

現行のシステムで、アプリケーション上でクラスタ構成やロードバランサーによる負荷分散をおこなっている場合も注意が必要です。

クラスタ構成やロードバランサーはクラウド上でもよく利用されますが、アプリケーションとは別に独自のツールを利用して実現しています。
そのため、クラウドへの移行時にはアプリケーションに修正が必要なこともあります。


AWS移行で利用するツール

クラウドサービスの中でもAWS(Amazon Web Services) に移行する場合は、次のようなツールを利用します。いずれもAWSで提供されているツールです。

AWSとは、Amazonが提供しているクラウドサービスであり、世界中で多くの個人・企業ユーザーがさまざまな方法で利用しています。


仮想マシンへ移行する場合

オンプレミスサーバをクラウドに移行する場合は、次のツールを利用します。

  • VM Import/Export
    VM Import/Export は、オンプレミス環境で構築した仮想マシンイメージをAmazon EC2(Amazon Elastic Compute Cloud)に、またはその逆にAmazon EC2のイメージをオンプレミスに移行するツールです。
    イメージを移行するので大きな変更はありませんが、移行元と移行先のシステムや要件を合わせる必要があります。また、移行できる仮想マシンのOSや仮想化ソフトウェアは限定されています。

  • AWS Server Migration Service 
    仮想マシンを自動的にAWSに移行するツールです。移行できる仮想マシンやOSの種類は限定されています。移行後は段階的に仮想マシンイメージをレプリケートし、Amazon Machine Image(AMI)を作成します。こちらも移行元と移行先のシステムや要件を合わせる必要があります。

  • CloudEndure Migration
    物理サーバ、仮想サーバ、他のクラウドサービスなどさまざまなサーバをAWSに移行するツールです。データもそのまま移行できます。データ転送後は切り替えだけで、高速移行が可能です。


ネットワーク経由でデータ転送をおこなう場合

移行にともなって大量のデータを転送する必要がある場合、インターネットを利用するとネットワークを圧迫するだけでなく、数週間もの日数がかかる場合があります。それを回避するためのデータ転送をサポートするツールが利用可能です。ツールを利用すれば、データの欠損などの不具合も起こりにくくなります。

  • AWS Direct Connect
    AWSとデータセンター、オンプレミス環境の間で専用線を確立するツールです。移行にともなう大量のデータ転送をスムーズにし、通信のセキュリティも確保します。

  • AWS Snowball 
    単純なデータ移行に向いているデータ転送ツールです。大容量の物理デバイスを利用し、インターネットを利用せずにデータ転送をおこないます。インターネットを利用しないので、セキュリティリスクも低く抑えられます。


データベースの移行をおこなう場合

データだけでなく、データベースを構造ごと移行する場合です。データベースを移行中はシステムが停止するため、できるだけ素早く作業をおこなわなければなりません。そのため、次のツールを活用します。

  • AWS Database Migration Service 
    RDB 、データウェアハウス、NoSQLデータベース など、さまざまなデータベースの移行を容易にするツールです。データベースのインポートやエクスポートだけでなく同期も可能で、異なるデータベースエンジン間の移行にも対応しています。


クラウド移行の事例 

エヌアイデイがオンプレミス環境からクラウド環境へ移行した2つの事例から課題と移行作業を紹介します。


SBIいきいき少額短期保険株式会社

課題:現行のシステムはオンプレミスとデータセンターが併用されていました。
OSのEOS対応をおこなう必要があり、またSBIグループでクラウド化も推進されていたため、クラウドへの移行をおこなう必要がありました。

作業内容:Active Directoryのデータを保持したままクラウド移行をおこないたかったため、最初にオンプレミス環境でドメイン機能のバージョンアップを実施しました。
そのあと、AWS上にActive Directoryサーバ を新たに構築してからオンプレミス環境とデータの同期をおこない、サービス提供に問題がないことを確認したうえで、他のファイルサーバなどの移行もおこなっています。この作業により、当初の目的であるOSのEOS対応とクラウド移行を実現し、あわせてセキュリティと可用性の向上を実現しています。


>> ActiveDirectoryサーバのクラウドマイグレーション事例の詳細はこちら


全日空商事株式会社

課題:ECサイト「A-style」の基盤システムで老朽化(稼働率低下、性能不足など)対応と性能改善、セキュリティの強化をおこなうため、クラウドへの移行が望ましい状態にありました。

作業内容:オンプレミスと同じ環境をAWS上に再構築し、さらにデータの冗長化やWAFの導入でセキュリティを強化しました。マネージドサービス を活用することで、作業量を削減し、運用業務の自動化・省力化も実現できました。


>> ECサイト基盤システムのクラウドマイグレーション事例の詳細はこちら


まとめ

オンプレミス環境をクラウド環境に移行するには、さまざまな準備をおこなわなければなりません。作業は膨大であり、かつ時間もかかります。また、自社のスタッフだけで移行作業ができる企業は少ないので、業務およびシステムやクラウドサービスに関して、幅広い知識とノウハウを持つ人材が必要です。
必要に応じて、移行作業のノウハウを持つ専門家のサポートを受けることをおすすめします。

株式会社エヌアイデイには、50年以上にわたりシステムの開発、運用、保守などの実績があります。また、APN(AWS Partner Network) アドバンストティアサービスパートナーとしてAWSに関する多くのノウハウを蓄積しているので、よりスムーズなクラウド移行をサポートできます。


>> エヌアイデイの「システム構築サービス」について詳しくはこちら


NID コラム編集部
NID コラム編集部
エヌアイデイのITナレッジカフェは、50年以上にわたり幅広いITトータルソリューションを提供する独立系IT企業「株式会社エヌアイデイ」の企業コラムです。 デジタル化のご相談、受託開発、システム運用監視など、SIerをお探しの方は気軽にご相談ください。

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