Pythonを使ったWebアプリ開発、手順やフレームワーク、メリット・注意点を徹底解説
人気のプログラミング言語、「Python(パイソン)」の名前を聞いたことがある人は多いでしょう。AI開発に特化した言語というイメージもありますが、実際にはデータ収集や分析処理、Webアプリケーションやスマートフォンアプリケーションの開発など、幅広い用途に活用されています。
ここでは、今やエンジニアの習得必須言語ともいわれるPythonでWebアプリケーションを構築する際の基本から、その手順、注意点などを徹底解説します。
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- 1.そもそもWebアプリケーションとは?
- 2.Pythonとは?
- 2.1.Pythonでできること
- 3.Pythonを使ったWebアプリケーションの開発例
- 4.Pythonを使ったWebアプリケーション開発のメリット
- 4.1.開発の効率が良い
- 4.2.エラーを引き起こしにくい
- 4.3.コンパイルが不要
- 4.4.ライブラリが豊富
- 4.5.優良なフレームワークが豊富
- 4.5.1.Django(ジャンゴ)
- 4.5.2.Flask(フラスク)
- 4.5.3.Bottle(ボトル)
- 4.5.4.streamlit(ストリームリット)
- 4.5.5.Tornado(トルネード)
- 4.6.OSの種類を問わない
- 4.7.メンテナンスしやすい
- 4.8.説明資料が豊富
- 5.Pythonを使ったWebアプリケーション開発のデメリット・注意点
- 6.Pythonを使ったWebアプリケーション開発の手順
- 6.1.開発環境を構築する
- 6.1.1.パソコンの準備
- 6.1.2.必要なアプリケーションのインストール
- 6.1.3.Pythonのインストール
- 6.1.4.Webサーバの導入
- 6.2.フレームワークを活用し開発する
- 6.3.Webアプリケーションを公開する
- 7.Pythonを使ったWebアプリケーション開発に必要な知識
- 7.1.Pythonの基礎知識
- 7.2.フレームワークの使い方
- 7.3.HTML・CSSの知識
- 7.4.JavaScriptの知識
- 8.Pythonを使ったWebアプリケーション開発に必要な知識の習得方法
- 8.1.本で勉強する
- 8.2.オンライン講座で勉強する
- 8.3.スクールに通う
- 9.Webアプリケーション開発以外のPythonの活用方法
- 9.1.スマートフォン向けアプリケーション開発
- 9.2.AI開発
- 9.3.画像処理
- 9.4.データ分析
- 10.PythonによるWebアプリケーション開発は自社開発?外部委託?
- 11.まとめ
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そもそもWebアプリケーションとは?
Pythonの解説に入る前にWebアプリケーションについて振り返ってみましょう。
Webアプリケーションとは、Webブラウザ上で利用するアプリケーションのことです。Google Playなどのサイトからダウンロードしてローカルで動かすアプリケーションを「ネイティブアプリケーション」と呼ぶのに対し、ダウンロードすることなくインターネット上で動作するプログラムがWebアプリケーションです。
Webアプリケーションについては下記で詳しく紹介しています。ぜひ、あわせてご覧ください。
あわせて読む>> Webアプリケーションとは?仕組みや言語、開発手順を事例とあわせて解説
Pythonとは?
Pythonとは、機械学習や統計処理、そしてWebアプリケーションなどの開発に利用される、人気の高いプログラミング言語です。
Pythonはシンプルなソースコードで、記述しやすく、読みやすいプログラムを作成することができます。シンプルなソースコードはエラー箇所も見つけやすいため、あとから修正がしやすいという特徴を持っています。ソースコードがシンプルでわかりやすいことから、初心者でも理解しやすいという点も人気の理由です。
Pythonは「インタプリタ型」のプラグラミング言語です。インタプリタ型とはプログラミング言語処理システムの一種で、プログラムを一行ずつ解釈し、その都度実行する方式のことを指します。そのため、プログラムの実行結果を確認しながらソースコードを書き進められるという利点があります。
PythonでWebアプリケーションを開発するメリットや注意点については、あとの章で詳しく解説します。
Pythonでできること
Pythonはさまざまな用途に活用できます。生成AIで著名な「ChatGPT」の開発もその一例です。AI関連では、AlexaやSiriなどの音声認識の開発にも、Pythonが使われました。
Pythonには、大量のデータを高速で処理したり、分析したりするための「ライブラリ」が多数用意されています。ライブラリとは、開発によく使われる関数などを機能ごとにまとめたもので、Pythonを使った開発の効率を向上させるためには不可欠です。
PythonでWebアプリケーションを開発する際のライブラリについても、あとの章で詳しく解説します。
Pythonを使ったWebアプリケーションの開発例
ここでは、Pythonを使ったWebアプリケーションの開発例をご紹介します。
YouTubeやInstagramをはじめ、誰もが知っているような著名なアプリケーションは、Pythonを活用して開発されました。実例を知ることで、PythonがWebアプリケーションの開発にどれほど広く活用されているかがわかるでしょう。
6つの実例をご紹介します。
YouTube
YouTubeの基本機能の一部は、Pythonによって開発、実装されています。主にサーバサイドの処理に使われています。例えば、動画の再生機能やアカウント管理機能、動画検索機能などがあげられます。Pythonは大量のデータを収集し、分析する用途に適しているため、YouTubeの検索機能の開発にも活用されています。
動画の再生機能には、Pythonの安定した処理能力が活用され、アカウント管理にはユーザIDを認証するためのフレームワークが活用されました。フレームワークとは、Pythonでの開発をサポートするためのツールで、設計パターンなどの基本的な構造を提供する「雛形」です。
フレームワークについては、あとの章で詳しく解説します。
写真共有サイトのInstagramも、Pythonによって開発されました。サービス開始当初のInstagramはPythonで開発されてはいなかったのですが、急速に増加するユーザ数に対応するため、開発が容易で迅速かつ豊富な機能を実装することができるPythonが導入されました。Pythonの使い勝手の良さを物語るエピソードだといえるでしょう。
Spotify
音楽配信サービスの大手であるSpotifyも、Pythonを活用して開発されたWebアプリケーションです。Pythonのデータ分析機能が、Spotifyのバックグラウンドを支えています。Pythonには数値計算を扱うライブラリが多く取り揃えられており、Spotifyのように楽曲などのデータ分析を必要とするサービスには向いています。
Dropbox
オンラインストレージサービスとして世界中で使われているDropboxも、Pythonを使って開発されました。オンラインストレージは、世界各国のさまざまな環境からアクセスでき、安定したサービスを提供する必要があります。開発にあたっては、処理スピードの速さが要求されるため、少ないソースコードで開発が可能なPythonが採用されました。
写真や動画の共有サービスであるPinterestにも、Pythonが活用されています。Pinterestも利用者が急増した局面があり、Pythonが成長を支えてきました。Pinterestには、主にPythonのフレームワークの一つ「Django(ジャンゴ)」が使われています。
Evernote
Evernoteは、クラウド上にテキストや画像、PDFファイルなどをメモのように保存できるサービスです。名刺やレシートなどをスマートフォンのカメラで撮影し、そのままデータとして保管できるため、仕事でもプライベートでも活用できます。このEvernoteも、Pythonで開発されました。
Evernoteは、APIを一般公開している点が特徴です。PythonとEvernoteのAPIを組み合わせることで、オリジナルのアプリケーションを開発することができます。
Pythonを使ったWebアプリケーション開発のメリット
Pythonを活用したWebアプリケーション開発には、多くのメリットがあります。
ここでは、Pythonを使ったWebアプリケーション開発のメリットをまとめています。
開発の効率が良い
開発効率の良さは、Pythonのメリットとして特筆したい点の一つです。Pythonはソースコードがシンプルなので、記述にかかる時間が短縮できます。ソースコードのシンプルさはデバッグ(ソースコードのエラーやバグを見つけて修正する作業)のしやすさにもつながります。
また、ソースコードの記述も統一しやすくなり、チームでの開発作業を円滑に進めることができます。
エラーを引き起こしにくい
Pythonは、文法がシンプルな点も特徴です。文法がシンプルなソースコードは、可読性が高くなり、チームで作業する際などに、他の人が見てもわかりやすいのがメリットです。
Pythonの文法は、関数名や大文字と小文字の区別、インデントの位置などに厳密性を要求する仕様です。文法に忠実なソースコードで書かれていない場合、プログラムは実行されません。したがって、実行可能なソースコードを作成すれば、自然に誰が書いても同じようなソースコードになるため、他のメンバーにも理解しやすいものとなります。
また、ソースコードの可読性が高ければ、開発途中の間違いに気付きやすいため、予期せぬエラーを引き起こしにくいといわれています。
コンパイルが不要
Pythonの特徴として、インタプリタ型の言語であるため動作の確認が容易であることは、説明してきました。インタプリタ型の言語では、ソースコードが1行ずつ読み込まれ、1行ずつ処理を実行します。そのため、動作確認が容易になります。
インタプリタ型ではない言語では、処理の実行に「コンパイル」の過程を要します。コンパイルとは、ソースコードを一括で機械語に変換することです。一括で変換するため、コンパイルの途中でソースコードに文法ミスなどがあると、エラーが発生してしまいます。
いったん作りあげたソースコードから、文法ミスなどの部分を見つけ出すには時間と手間がかかります。Pythonはコンパイルが不要なため、迅速に間違いを発見することができます。
初心者にも扱いやすい言語だといえるでしょう。
ライブラリが豊富
ライブラリが豊富に取り揃えられているのは、Pythonの長所です。ライブラリとは、よく使われるソースコードや便利な関数などを機能ごとにひとまとめにしたもので、機械学習用のライブラリや高度な数値計算用のライブラリなど、多くの種類があります。
目的にあったライブラリを選択して活用することで、開発プロセスをよりスムーズに進められます。同時に工数やコストの削減が可能になる場合もあるでしょう。
優良なフレームワークが豊富
ライブラリと同様に、優良なフレームワークが豊富に揃っているところもPythonのメリットです。Pythonに限らず、他の言語でもWebアプリケーションの開発には「雛形」にあたるフレームワークが活用されます。
Webアプリケーションを開発する際、ログイン機能や会員登録機能など、どのアプリケーションでも基本的に共通する機能を一から作っていては、時間がかかり過ぎてしまいます。このような共通機能の開発には、すでに用意されているフレームワークを使って、効率的に開発するケースが一般的になってきています。
Pythonの場合、優良なフレームワークが多数用意されている点もポイントです。
Pythonの主なフレームワークをご紹介します。
Django(ジャンゴ)
Djangoは、Pythonの代表的なフレームワークです。Webアプリケーションの開発に必要なユーザ認証や管理画面など、ひととおりの機能を網羅的に備えていることから、「フルスタックフレームワーク」と呼ばれます。
Djangoは機能が豊富なため、マスターしなくてはならない要件が多く、習得の難易度は高めです。Djangoは大規模開発に向いているとされているので、Djangoを使いこなせるようになっておけば、エンジニアとしての有用性は高まるでしょう。
難易度は高めですが、初心者向けのチュートリアルが用意されており、学習の環境は整っています。チュートリアルではDjangoの操作方法だけでなく、Pythonの概要なども学習できます。
Flask(フラスク)
Djangoと並んで人気の高いフレームワークが、Flaskです。機能を網羅しているDjangoに対し、Flaskは機能を必要最低限に絞り込んでいます。
シンプルで軽量ながらも柔軟性が高く、容易に使い始めることができます。Flaskを利用すれば、数行のプログラムでWebアプリケーションを構築できるため、小規模なアプリケーションから大規模なアプリケーションまで幅広く活用されています。
Djangoと同様、チュートリアルが用意されているため、初心者の学習には好適です。
Bottle(ボトル)
Bottleは、Flaskよりもさらに軽いフレームワークで、bottle.pyという一つのファイルだけで構成されています。
構造がシンプルなので理解しやすく、動作が早いのが特徴です。Python初心者の練習用として、最適なフレームワークとされています。
ただし、シンプルすぎるためか実務で使われることはあまりありません。Bottleで基本を学習したあと、DjangoやFlaskにステップアップする利用法がおすすめです。
streamlit(ストリームリット)
streamlitは、データサイエンス分野のWebアプリケーション開発によく利用されるフレームワークです。
手軽さが特徴で、最短1行でWebアプリケーションのプログラミングができます。分析結果を複数人で共有したり、Webアプリケーションのプロトタイプを作成したりする際に便利です。直感的に書きやすいコード体系で、公式のドキュメントも充実しているため、初心者にも、学習しやすいフレームワークです。
Tornado(トルネード)
高速処理を特徴とするフレームワークがTornadoです。処理スピードの速さが求められるWebアプリケーションの開発に向いています。フレームワークとしては珍しく、マルチタスクに対応できる点が特徴です。
Tornadoは、コンピュータへの入力に対して反応が返ってくるまでの間に、別の処理を並行しておこなえる「ノンブロッキングI/O」を採用しています。大量の同時接続をこなせるため、SNSやチャットなどのWebアプリケーションに適したフレームワークです。
日本語で解説された情報が少ないという難点があるため、初心者には難しいかもしれません。
OSの種類を問わない
Pythonは、OSの種類を問わずに開発環境が導入できます。Webアプリケーションの開発では、OSによってプログラミング言語の使い分けをしなければならないことがありますが、Pythonで書かれたソースコードは、WindowsやMac、Linuxなど、さまざまなOSで実行できます。
OSごとにプログラミング言語を変えた場合、言語によって使えるフレームワークも異なります。言語ごとに開発手法を見直す必要があるため、かなり手間のかかる作業になります。
Pythonはエンジニアにとって、開発しやすい言語だといえるでしょう。
メンテナンスしやすい
Pythonはメンテナンスしやすい言語です。Pythonのシンプルな文法は、ソースコードの可読性を高め、理解しやすくします。これにより、ソースコードの見直しや修正を容易におこうことができます。また、Pythonには豊富なライブラリがあるため、多くの一般的なタスクを効率的に処理できます。大規模な開発で、多人数による運用や保守が必要な場合、メンテナンスのしやすさは重要です。
書きやすく、読みやすいソースコードが作成できる点も、Pythonのメンテナンス性の高さにつながります。開発の効率性とも関連しますが、ソースコードがシンプルかつ、インタプリタ型であるためコンパイルを必要としないPythonは、他の言語と比べてメンテナンスが容易だといえるでしょう。
説明資料が豊富
Pythonは便利な利用法や機能の解説などが豊富です。書籍だけでなく、Web上を探せば動画コンテンツなども見つけられます。これらの情報の多くは、開発者の視点からまとめられており、実践的な内容が多い傾向があります。
Web上には多くの解説記事などがアップされているため、トラブルが発生した際に役立つ情報が手に入ります。豊富な説明資料が利用しやすいので、Pythonが初心者にとって取り組みやすい理由の一つといえるでしょう。
Pythonを使ったWebアプリケーション開発のデメリット・注意点
実行速度が遅い
Pythonのメリットとして、コンパイルが不要な点をあげました。コンパイルが不要な半面、実行速度が遅いという注意点があります。
インタプリタ型の言語であるPythonは、ソースコードを1行ずつ読み込む仕様であるため、ソースコードの実行速度が他の言語に比べて遅い場合があります。
特に、CPU処理が多いアプリケーションや大規模なデータ処理においては、パフォーマンスの問題が発生することがあります。
メモリ使用量の増加
Pythonの動的な特性により、プログラムが実行されると、使用されたメモリが解放されずに残ることがあります。そのため、大規模なデータを処理したり、長時間実行されるアプリケーションを開発する場合には、メモリの使用量に注意する必要があります。
Pythonを使ったWebアプリケーション開発の手順
開発環境を構築する
最初に必要になるのが、開発環境の構築です。完成したWebアプリケーションが農作物だとすれば、開発環境は畑にあたります。
ここでは、開発のファーストステップを解説していきます。
パソコンの準備
PythonはOSに依存しないプログラミング言語であるため、パソコンに搭載されているOSはWindowsでもMacでも、Linuxでも問題はありません。ただし、インターネットに接続できる必要があります。
PythonでWebアプリケーションを開発する際、動画編集や本格的なオンラインゲームなどに求められるほどの高性能なパソコンは必要としません。それでも、ストレスなく開発を進めるには、一定以上のスペックが必要です。
PythonでWebアプリケーションを開発するためのパソコンに最低限必要なスペックは次のとおりです。
・Core i5以上のCPU
・8GB以上のメモリ
・256GB以上のストレージ
ストレージはHDDよりも、処理速度の速いSSDがおすすめです。
必要なアプリケーションのインストール
パソコンの準備が整ったら、必要なアプリケーションをインストールします。開発環境としてはWebブラウザの他にテキストエディタやデバッグ機能などがあげられますが、パッケージ化されている統合開発環境(IDE)を導入するケースが多いでしょう。
Webブラウザは、どれでも利用できますが、開発機能が充実しているのはGoogle Chromeです。Google Chromeは、過去のWebアプリケーション開発でも多く使われてきた実績があるため、エンジニアの知見が充実しています。
Pythonで使用できる統合開発環境として、代表的なものは次の3つです。
・Pycharm(パイチャーム)
・Visual Studio(ビジュアル スタジオ)
・Eclipse(エクリプス)
Pycharmは、コーディングをサポートする有償の統合開発環境で、PythonのWebアプリケーション開発のフレームワークと相性が良いとされます。WindowsとMacの両OSに対応しているため、使い勝手が良いのもポイントです。
Visual Studioは、テキストエディタの一種で、Microsoftから提供されています。Windows、Macだけでなく、Linuxにも対応しているため、OSを問いません。コードを素早く記述できる機能やデバッグ機能が搭載されており、利便性に優れています。無料プランと有料プランがあるため、利用シーンにあわせて選択すると良いでしょう。
Eclipseは、万能型の統合開発環境です。javaやPHPなどで広く利用されていますが、Pythonでも使われます。元々、IBMが開発した歴史のある統合開発環境で、のちにオープンソース化されました。
Pythonのインストール
統合開発環境を整備したら、Pythonをインストールします。使用するOSに合ったPythonの最新バージョンを、公式サイトからインストールするようにしてください。
Webサーバの導入
Pythonのインストールが済んだら、Webサーバの導入に移ります。Pythonを使ったWebアプリケーション開発で導入されるWebサーバは、Nginx(エンジンエックス)かApache(アパッチ)が適しているでしょう。
Nginxは、レスポンスの速いWebサーバで、Webアプリケーションの同時接続にも強い特徴があります。Apacheは1995年にリリースされており、インターネットの歴史とともに歩んできたともいえるWebサーバです。重い処理を得意としています。
どのサーバが最適かは、プロジェクトの要件や特性、開発者の経験などによって異なります。
フレームワークを活用し開発する
Webサーバを導入したら、フレームワークを活用して開発を進めると良いでしょう。Pythonには豊富なフレームワークが用意されています。Pythonに限らず、Webアプリケーションの開発にはフレームワークを使うのが通例です。
フレームワークには、ログイン機能や会員管理機能など、よく使用するソースコードがまとめられています。フレームワークの活用により、フルスクラッチでソースコードを書く必要がなくなるため、効率的な開発が可能になります。開発するWebアプリケーションの要件にあわせて、適切なフレームワークを選択しましょう。
Webアプリケーションを公開する
Webアプリケーションの開発が終わったら、いよいよ公開となりますが、その前にテストが必要です。Pythonのフレームワークには、テストやデバッグのツールが組み込まれているケースが多いので、必ずテストをおこない、Webアプリケーションの動作を確認しておきましょう。
Webアプリケーションの信頼性や安定性を担保するうえで、テストとデバッグは重要です。テストを重ねて問題がないことを確認したうえで、開発したWebアプリケーションをインターネット上のサーバに配置します。公開後に問題が発生しなければ、開発は終了です。
Webアプリケーションの開発手順は下記で詳しく紹介しています。ぜひ、あわせてご覧ください。
あわせて読む>> Webアプリケーションとは?仕組みや言語、開発手順を事例とあわせて解説
Pythonを使ったWebアプリケーション開発に必要な知識
Pythonを使ってWebアプリケーションを開発する手順の概略を解説してきました。
しかし、Pythonを使ったWebアプリケーション開発には、いくつかの重要な知識が必要です。これらを理解していないと、効率的な開発が難しくなります。
ここでは、Pythonを使ったWebアプリケーション開発に必要な知識について、基本的な要素をまとめています。
Pythonの基礎知識
Pythonを使ってWebアプリケーションを開発するため、Pythonの基礎知識があることは前提です。Pythonのフレームワークを活用するためにも、Pythonの知識を使います。開発に入る前に、Pythonの基礎文法をマスターしておきましょう。
フレームワークの使い方
Pythonを使ってWebアプリケーションを開発する際に、フレームワークが重要な働きをすることは前述しました。どのようなフレームワークを選択すれば最適なのか、どのフレームワークのどの機能を活用するのかなどの使い方がわかっていなければ、効率的な開発は望めません。
フレームワークにも、それぞれの関数や記述の決まりがあります。これらを学んでおくことが、効果的にフレームワークを使いこなすうえで必要です。フレームワークによっては、他のフレームワークと連携できるものもあるため、連携方法も学んでおくと開発における選択肢の幅が広がります。
HTML・CSSの知識
Webサイトの作成に不可欠な言語であるHTMLやCSSの知識も、PythonでWebアプリケーションを開発する際には欠かせません。文字の大きさや色、配置などの調節のほか、Web上に置くボタン類や入力フォームの制作にもこれらが使われます。
エンジニアであれば、多くの場合HTMLとCSSの知識は持っているでしょう。これらの知識がない場合は、pythonでのWebアプリケーション開発以外の案件でも役立つ可能性が高いため、学んでおきたい言語です。
JavaScriptの知識
JavaScriptは、Webアプリケーションに動きをつける際に使われます。画像をスライドさせたり、ウィンドウをポップアップさせたりするなどのWebアプリケーション上の動きは、JavaScriptで制御されます。
アニメーションの作成など、動的な表現を実装するには不可欠です。フロントエンドの開発に携わるエンジニアにとっては、必修の言語といえます。JavaScriptにもフレームワークが存在し、これらを理解していると、より効率的な開発ができるでしょう。
Pythonを使ったWebアプリケーション開発に必要な知識の習得方法
ここでは、Pythonを使ったWebアプリケーション開発に必要な知識の習得方法をご紹介します。
いずれの習得方法にも一長一短があるため、よく検討して、自分に合った知識の習得方法を選んでください。
本で勉強する
本を購入して独学で勉強することも可能です。ただし、まったくの独学となることが多いため、文章の読解力や、ある程度のプログラミングの知識が必要です。
メリットとしては、自分の好きなタイミングで勉強することができます。
また、他の勉強方法と比べて費用をおさえることができるでしょう。Pythonだけでなく、HTMLやCSS、JavaScriptなどの解説書も多数あるため、自身のレベルや学習方針などにあわせて、適切な本を選んでください。
オンライン講座で勉強する
Pythonが学べるオンラインの講座もあります。無料で利用できる学習系のサイトもあるため、初期費用をかけずに試してみたい方には好適です。
有料の講座になると、PythonやWebアプリケーション開発に詳しいエンジニアに質問できるサイトもあります。フレームワークなど発展的な内容を学んだり、積極的に質問して知識を吸収したい方には、有料のオンライン講座をおすすめします。
スクールに通う
本格的に学びたい場合は、スクールに通う方法もあります。プロの講師から直接指導を受けることができるのが大きな利点です。疑問が生じたらすぐに質問できるため、独学よりも素早く疑問を解決できます。
一方で、自分の好きなタイミングで学習できない、受講費が高額なことがデメリットとしてあげられます。貴重なお金と時間を無駄にしないために、スクールは慎重に選ぶ必要があります。
Webアプリケーション開発以外のPythonの活用方法
Pythonを使って開発されるのは、Webアプリケーションだけではありません。
Pythonは、AI関連や統計処理などにも使われる、汎用性を持ったプログラミング言語です。
ここでは、Webアプリケーション開発以外の、Pythonの活用方法を見ていきます。
スマートフォン向けアプリケーション開発
Pythonは、スマートフォン向けのアプリケーション開発にも使われています。「Kivy(キビー)」と呼ばれる、スマートフォン向けアプリケーションの開発に適したオープンソースライブラリがあります。Kivyを使うことで、iOSとAndroidの双方で動く、クロスプラットフォーム対応のアプリケーションを開発することができます。
AI開発
Pythonは、AI開発でもよく活用されています。とりわけ、データからパターンを学習し、未知のデータに対してパターンを予測する「機械学習」の分野で活用されています。
Pythonには、さまざまな数値計算に対応できる「TensorFlow(テンソルフロー)」、深層学習用の「PyTorch(パイトーチ)」、機械学習をサポートする「scikit-learn(サイキット・ラーン)」など、AI開発に適したライブラリが多数用意されています。これらのライブラリを使えば、AI開発を効率的におこなうことができます。
画像処理
Pythonにはオープンソースライブラリ「OpenCV(Open Source Computer Vision Library)」があります。OpenCVは、画像処理によく活用されています。顔の検出や画像認識、解析などに使われ、顔認識のアプリケーションを作成することができます。
データ分析
データ分析も、Pythonが得意とする分野です。Pythonには、大量のデータを収集し、解析するのに便利なライブラリが用意されています。Web上から大量の情報を集め、特定のデータを抽出するスクレイピングに使われる「Requests(リクエストス)」や、データ解析用ツールを統合した「Pandas(パンダス)」などのライブラリがあります。これらのライブラリを活用することで、データ収集や分析処理を効率的に進めることができます。
PythonによるWebアプリケーション開発は自社開発?外部委託?
Pythonを使ったWebアプリケーションの開発に際して、企業は自社での開発を選択すべきか、それとも外部に委託すべきかという問いが浮かびます。両者にはそれぞれ一長一短があり、プロジェクトの特性や企業のニーズに応じて適切な選択をおこなう必要があります。
自社開発の場合、社内で完結するためスピード感のある開発が可能です。開発にかかる費用も外部委託に比べおさえられるでしょう。しかし、開発経験のあるエンジニアが社内にいない場合は、採用や教育に時間と費用がかかってしまいます。
外部委託の場合、専門知識や経験豊富な開発者やチームに開発を任せられます。特に、短期間でのプロジェクトや迅速なスケーリングが必要な場合には、外部委託が有効です。また、大規模開発をする際に、社内のリソース不足を外部委託で補うなどの活用法もあります。
ただし、外部委託にはコミュニケーションや品質管理の課題がともなうことがあるため、定期的な進捗報告やフィードバックの確保などが重要です。
Webアプリケーション開発に不安がある場合は、外部委託を検討することをおすすめします。委託先を選定する際は、実績や見積内容をよく確認し、十分に信頼できる業者を選びましょう。
株式会社エヌアイデイは1967年の創立以来、独立系のシステムインテグレーターとしてさまざまなソフトウェア開発を担ってきました。ITのプロフェッショナルとして、技術力の高いシステムアーキテクトによるWebアプリケーションの開発実績も豊富です。お客様の経営課題の解決に向け業務分析などの上流工程から、システム稼働後の安定運用まで一貫したWebアプリケーション開発の提案をおこないます。外部委託をご検討の際は、お気軽にご相談ください。
>> エヌアイデイの「Webアプリケーション開発」について詳しくはこちら
まとめ
Pythonを使ったWebアプリケーションの開発に関して、メリットやデメリット、開発の手順など幅広く解説してきました。
Pythonを使ったWebアプリケーションの開発は、近年急速に発展しています。その背景には、Pythonのシンプルさと柔軟性があります。Pythonは読みやすく、学習しやすい言語であり、多くのフレームワークやライブラリを活用することができます。これにより、開発者は素早く効率的にWebアプリケーションを開発することが可能になります。
今後、Pythonを使ったWebアプリケーション開発はさらに拡大し、新たな技術との統合が進むでしょう。