サーバ移行の手順や注意点をわかりやすく解説
経年劣化(サーバ・OSのサポート切れ)やスペック不足などで現行サーバに不安を感じたら、サーバ移行のタイミングです。サーバのスペックは日々向上しているため、サーバを移行すれば業務の効率性が高まる可能性は高いでしょう。
しかし、サーバ移行には正しい手順や注意点があるため、これらを軽視することで何らかのトラブルが発生する可能性があります。
ここでは、サーバ移行の手順や注意点をわかりやすく解説します。各手順を入念に確認しながら、ミスのないように作業を進めましょう。
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- 1.サーバ移行の前に注意すべきこと
- 1.1.サーバ移行の目的をはっきりさせる
- 1.2.移行先サーバの種類を検討する
- 1.2.1.レンタルサーバ
- 1.2.2.VPS(Virtual Private Server)
- 1.2.3.オンプレミス
- 1.2.4.クラウド
- 1.3.サーバ移行の方法を決める
- 2.移行先サーバの選定ポイント
- 3.サーバ移行の手順
- 3.1.データのバックアップをとる
- 3.2.移行前のテストをおこなう
- 3.3.データの移行作業をおこなう
- 3.4.移行後の表示・動作確認をおこなう
- 3.5.移行後のアナウンスをおこなう
- 4.サーバ移行時のトラブルを避けるために注意すべきポイント
- 4.1.ドメイン変更(取得)の検討
- 4.2.SSL化する場合は事前に証明書を取得しておく
- 4.3.利用者への事前アナウンスを徹底する
- 4.4.繁忙期の移行は避ける
- 5.サーバ移行の外部委託を検討する際のポイント
- 6.まとめ
サーバ移行の前に注意すべきこと
サーバ移行を考える際、サーバ移行の前に注意すべきことがいくつか存在します。
ここで紹介するポイントをあらかじめ明確にし、適切なサーバ移行をおこないましょう。
サーバ移行の目的をはっきりさせる
まずは、サーバ移行の目的をはっきりさせましょう。
サーバを移行する際は「なぜサーバを移行するのか」をよく考える必要があります。
移行を決断する目的はさまざまですが、基本的には以下のような理由があげられます。
スペック不足の補完
現行サーバではスペック不足だと感じた場合は、サーバの移行を考える必要があります。サーバのスペックが不足しているとアクセスやデータの処理が追いつかず、サーバに大きな負荷がかかります。大きな負荷がかかることでサーバの処理に遅延が発生してしまうと、業務生産性の低下にもつながります。このような場合は、なるべく早くサーバを移行させて業務を円滑に進められるようにしましょう。
環境の変化
IT技術は急速に発展し、インターネットを取り巻く環境も絶えず変化しています。古いサーバを使用し続けると、通信スピードの向上やデータ容量の増加など、環境の変化に追いつくのが難しくなります。技術の進歩にともなうサーバの移行は、将来的にも随時実施することをおすすめします。
セキュリティの向上
先述したサーバ環境だけでなく、セキュリティ面もIT技術の発展にともなって向上しています。新しいサーバであれば、セキュリティを考慮した最新の周辺機器・ソフトウェアを利用することが可能になります。個人情報や取引先のデータなどを取り扱う企業は、セキュリティを重要視しなければなりません。セキュリティ面を軽視したことで情報漏洩が発生すれば、大きな損害が発生するだけでなく、社会的信用も喪失する可能性があります。サーバのセキュリティを向上させて情報漏洩のリスクを最小限に抑えるようにしましょう。
なお、古いサーバであっても、セキュリティアップデートが定期的におこなわれている限り、セキュリティ上の問題は発生しません。
移行先サーバの種類を検討する
サーバにはいくつかの種類が存在するため、どのサーバに移行するかを検討する必要があります。
それぞれのサーバの特徴やメリット・デメリットを見ていきましょう。
レンタルサーバ
「レンタルサーバ」は、その名のとおりサーバをレンタルして使用できるサービスです。すでに構築されているサーバを使用するため、自社でサーバを構築する必要はありません。
ただし、レンタルサーバは他のユーザーと共有して使用する場合がほとんどです。そのため、少なからず他のユーザーの影響を受けてしまう可能性があります。
また、一つのサーバでOSやミドルウェア、アプリケーションを共有で使用するため、アップデートやカスタマイズを自由におこなうことはできません。
VPS(Virtual Private Server)
「VPS」は、物理的なサーバをソフトウェアによって仮想的に分割し、複数の独立した仮想環境を作り出す技術です。これにより、1台の物理サーバ上で複数の仮想サーバを動作させることができます。各仮想サーバは独立して動作し、自身のオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションを実行できるようになっています。1台の物理サーバを複数のユーザーで共有する形ではあるものの、専用の仮想サーバを利用できるため他のユーザーの影響を受けることはありません。専用サーバであるため管理者権限を割り当てられることは多く、OSやアプリケーションのカスタマイズも自由です。
ただし、物理サーバに作られた仮想サーバを利用していることから、物理サーバに何らかのトラブルが発生した際は仮想サーバも影響を受ける可能性があります。
オンプレミス
「オンプレミスサーバ」は、企業が自社内に設置する物理的なサーバを指します。自社で直接管理・運用する必要はありますが、その分カスタマイズの自由度は高くなります。社内ネットワークを使用する場合、セキュリティ面の安全性を考えるとオンプレミスが望ましいとされていました。
しかし、近年ではほとんどのオンプレミスサーバも外部(インターネット)と接続されているため、自社で十分なセキュリティ対策を講じる必要があります。
また、オンプレミスサーバの導入には初期投資が必要です。ハードウェア(サーバ、ネットワーク機器等)の購入や設置に関わるコストだけでなく、運用にかかるランニングコスト(電気代や空調など)も考慮する必要があるでしょう。
クラウド
「クラウドサーバ」は、ネットワークを経由して提供されるサーバです。物理サーバの設置が不要なので、導入にかかる初期費用を抑えつつ、インターネット環境さえあれば利用可能です。
特徴は柔軟性および拡張性の高さです。例えばサーバ容量が不足した場合、物理サーバはメモリなどのハードウェアを追加しなければなりませんが、クラウドサーバは必要な容量を簡単に増やすことができます。
ただし、インターネット環境下での利用が前提となる関係上、サービス提供会社のセキュリティ対策をよく確認するようにしてください。
あわせて読む>>サーバとは?基礎から種類まで初心者でもわかりやすく解説
サーバ移行の方法を決める
サーバ移行の方法もあらかじめ決めておくとよいでしょう。
企業は自社で移行するか、外部委託する必要があるかを検討しましょう。
どちらが適しているかは企業により異なります。
自社で移行する
サーバ移行のコストを抑えたい場合は自社で移行するとよいでしょう。すべての作業が自社で完結するため、外部委託するよりもコストを抑えられます。
ただし、自社で移行するにはサーバ移行の知識を持つ人材が必要です。社内に適した人材がいない場合は、外部委託での移行をおすすめします。
また、サーバ移行を担当できる人材がいても、その人数が限られているか、経験が浅い場合は慎重に検討しましょう。担当者に大きな負担が発生し、想定よりもサーバ移行に時間がかかってしまう可能性があります。
外部委託で移行する
自社で移行できるか不安な場合は、外部委託することを推奨します。サーバ移行を請け負っている企業・サービスに依頼すれば、サーバ移行で発生する作業を一手に引き受けてくれます。
ただし、自社で移行をおこなう場合と比較すると、どうしてもコストは高めとなってしまうため、費用対効果を考えたうえで外部委託するかを判断しましょう。
また、サーバには企業の機密情報が保存されているため、信頼できる企業・サービスを選ぶことも大切です。
あわせて読む>>【初心者向け】サーバ構築とは?基礎から種類、構築手順までをわかりやすく解説
移行先サーバの選定ポイント
サーバを移行する際、移行先サーバをどのような基準で選ぶべきか迷ってしまう場合もあるでしょう。
ここからは移行先サーバの選定ポイントを紹介します。
事前に重視すべきポイントを明確にしておくことで、サーバの選定が円滑に進むでしょう。
可用性
サーバがダウンするとアクセスができなくなってしまうため、サーバが正常に動作し続けられるかは重要なポイントです。障害に強く、障害が発生しにくいサーバであれば、結果的にサーバが提供するサービス中断にともなう損失を最小限に抑えることが可能になります。
機能性
サーバを選ぶ際は、サーバスペックにも気を配りましょう。どのような目的でサーバを利用するのかによって必要なスペックは異なるため、あらかじめどの程度のスペックが必要なのかを把握しておくことが重要です。
具体的には「CPU」「メモリ」「容量」が判断材料となるでしょう。処理速度を重視する場合はCPUやメモリが優れているサーバ、膨大なデータを扱う場合はデータ保存容量の大きいサーバになりますが、運用中にサーバスペックを可変させるほうがよいのか否かにもよって判断は変わります。
保守・サポート
レンタルサーバやクラウドサーバへの移行を考えている際は、保守・サポート体制も重要なポイントです。サポート体制はサービス提供会社によってさまざまなため、サポート内容を確認し、サポート体制が整っている会社を選びましょう。サービス提供会社への問い合わせ方法としては「メール」「電話」「チャット」の3種類があります。メールは返答までにタイムラグが発生する、電話は時間帯が限定されているなど、それぞれ一長一短です。そのため、できる限り問い合わせ手段が豊富なサービス提供会社を選ぶとよいでしょう。
セキュリティ
サーバには企業の大切なデータが保存されるため、十分なセキュリティを確保できるサーバ環境を選びましょう。セキュリティ面に弱点があると、サイバー攻撃の標的となってしまう可能性があります。サイバー攻撃によってデータが流出してしまった場合の損害は計り知れません。
価格
価格はサーバを選ぶうえで無視できないポイントでしょう。導入時のコストだけでなくランニングコストも踏まえたうえで判断する必要があります。
もちろん価格のみを考慮した結果、機能性が不足していては意味がないため、費用対効果を考慮しつつ選ぶことが大切です。
サーバ移行の手順
サーバを移行する際は、手順どおりに進めていく必要があります。
実際にどのように進めていくのかを詳しく見ていきましょう。
データのバックアップをとる
サーバを移行する前に、必ずデータのバックアップをとりましょう。サーバに保存されているデータは企業にとって大事なものです。サーバ移行の作業中に何らかのトラブルによってデータが破損・損失する可能性はゼロではありません。バックアップをとっておけば、万が一データが破損・損失してしまってもデータを復元できます。
バックアップデータは別のサーバやハードディスクなどに保存し、いつでもアクセスできるようにしておきましょう。複数の場所にバックアップデータを保存しておけばより安全です。
移行前のテストをおこなう
サーバの移行作業に入る前に、移行テストをおこないましょう。移行テストとは、古い環境から新しい環境へ移行する際の手順を通しでおこない、問題が発生しないかを確認するテストです。
移行作業で何らかの問題が発生する可能性は十分に考えられるため、事前にテストをおこなうことで、本番の移行作業での不安を払拭できます。初回の移行テストで問題や課題が見つかった場合は、問題や課題を解決したうえで2回目の移行テストを必ず実施するようにしてください。
データの移行作業をおこなう
データのバックアップをとり、移行テストが完了したら、実際にデータの移行作業をおこないましょう。企業で使用しているサーバは膨大なデータが保存されている場合が多いため、基本的にデータの移行には時間がかかります。
なお、データ移行中は運用制限をおこないデータにアクセスできない(させない)取り組みをおこなうことがあります。なるべく業務に影響が出ないように優先順を取り決めて、ユーザーによく周知してから移行するとよいでしょう。
また、データの移行作業はサーバを監視しながらおこなうようにしてください。膨大なデータを移行するため負荷がかかりやすく、障害の発生するリスクが高まります。監視しながら作業を進めることで、障害が生じた場合でも素早く対処できるようになります。
移行後の表示・動作確認をおこなう
データを移行し、新しいサーバにデータが反映されたら動作確認をおこないましょう。具体的には、移行先のサーバにアクセスできるか、移行データは正しく移行できたか(総データ件数の確認やサンプリング抽出)、サーバの動作確認(検索、追加、更新、削除等)などをおこないます。
不具合が発生していないか慎重に確認し、不具合が発生していた場合は、早急に対処する必要があります。動作速度(レスポンス)も確認しておくとよいでしょう。
移行後のアナウンスをおこなう
データの移行が終わり、特に問題が発生しなければ担当者に移行後の変更点や注意事項をアナウンスすることが重要です。サーバ移行にともない、データへのアクセス方法やシステムの運用フローが変更されている可能性があります。併せて、移行前の事前周知も徹底しておきましょう。アナウンスを怠り、情報がうまく共有されなかった場合、重要なデータへのアクセス方法がわからず業務に支障をきたす可能性は十分に考えられます。アナウンスによる情報共有を徹底するとともに、サーバ移行後のシステムに対応した新しいマニュアルを作成するとよいでしょう。
サーバ移行時のトラブルを避けるために注意すべきポイント
サーバ移行時はいくつか注意すべきポイントがあります。
トラブル発生の原因にもなるため、どのような点に注意するべきかあらかじめ把握しておきましょう。
ドメイン変更(取得)の検討
サーバを移行おこなう際は、ドメインの変更や新規取得の必要性も確認してください。既存ドメインの流用でない場合は新たにドメイン取得の手続きが必要になります。
SSL化する場合は事前に証明書を取得しておく
サーバ移行にともないWebサイトのSSL化をおこなう場合は、事前にSSL証明書を取得しておきましょう。SSL化とは、インターネット上の通信を暗号化する技術です。WebサイトとWebサイトにアクセスしたユーザーとのやり取りを暗号化することで、セキュリティ性を高められます。
WebサイトがSSL化しているかどうかはサイト利用者からも確認可能です。SSL化されているとアドレスが「https」になるほか、Internet Explorerならアドレスの横に鍵マークが表示され、Google Chromeなら「保護された通信」と表示されます。サイト利用者に安心感を与える意味でもWebサイトのSSL化を推奨します。
利用者への事前アナウンスを徹底する
サーバ移行する際は、利用者への事前アナウンスを徹底しましょう。利用者に何らかの影響がおよぶ可能性があるため、事前にその旨を通知しておくことが大切です。
サーバ移行は事前準備をおこなったうえで手順どおりに進めていく必要があるため、綿密な計画を立てておくことが重要です。移行作業は慎重におこない、問題が発生してもすぐに対応できるようにしておきましょう。
繁忙期の移行は避ける
サーバを移行する際、時間に余裕がある場合は繁忙期の移行はなるべく避けましょう。先述したように、サーバ移行のタイミングで不具合が発生しやすくなります。繁忙期は取引先とのやり取りやWebサイトの利用が活発になるため、移行中にトラブルが発生すると大きな損害につながる可能性があります。サーバを移行する時期は慎重に検討しましょう。
サーバ移行の外部委託を検討する際のポイント
自社でのサーバ移行が難しい場合は専門知識を持った業者への外部委託を検討するとよいでしょう。外部委託する場合は十分に信頼できる業者を選ぶことが大切です。大抵の業者はWebサイトにこれまでの実績を公開しているため、実績豊富な業者を選びましょう。
サーバ移行には専門的な知識・技術が要求されます。場合によっては大切なデータが破損・損失してしまう可能性があるため、問題なくサーバ移行できるか不安な場合は外部委託もおすすめなので、ぜひ選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
サーバ移行は注意点も複数存在します。場合によっては大きな損害が発生してしまう可能性もあるため、綿密に計画を立てて移行しましょう。
また、サーバにはクラウドサーバやレンタルサーバなどいくつかの種類があります。サーバによって特徴が異なるため、今回紹介した移行先サーバの選定ポイントも踏まえながら自社に適したサーバを選んでみてください。
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